ちいさなしまのおはなし
始まりの夏
[7/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
あ、太一見なかった?」
「治くんらしいわね。太一?見てないけど……もしかして」
「空の想像通りさ」
治が苦笑しながら言えば、空は全く!って眉を顰めた。
「あいつ、ご飯炊く係りのくせに!」
「空さんって、お兄ちゃんと同じグループだっけ?」
「そうよ。もう!あいつのせいでカレー食いっぱぐれちゃうわ!治くん、私が大輔とヒカリちゃんについてるから、治くんはその薪用の枝、持ってっちゃって」
「ああ、それなら大丈夫だよ。この薪用の枝さ、予備のために拾ってただけだったんだ。火おこし用の薪はもうとっくに集めて持って行ってたから、一緒に行くよ」
「……相変わらず用意周到ねぇ」
予備用の薪まで拾うなんて、何処までも慎重な彼に今度は空が苦笑する。
さて、と気を取り直し、一行は姿をくらましたお莫迦さんを探しに行こうと、一歩踏み出した時であった。
「……ん?」
ピタリ、と空と治の前を歩いていた大輔が急に立ち止まってしまった。
大輔と手を繋いでいたヒカリも当然大輔に引っ張られて止まることになるし、後ろを歩いていた空と治も動きを止められることになる。
「大輔、危ないでしょ?急に立ち止まっちゃ……」
「………………」
じ、と上を見上げて、空を見つめる大輔に、ヒカリもつられて空を仰ぐ。
ヒヤリ、とヒカリの頬に冷たいものが降ってきた。
「きゃっ!」
「ヒカリちゃん?」
ビックリして一瞬身を縮めたヒカリに、空が声をかけた。
大丈夫?って聞けば、びっくりしただけですってヒカリから返ってきた。
「何か冷たいものが降ってきて……」
「冷たいもの……?」
「……空」
雨でも降ってきたのだろうか、傘持ってきてないどうしようって空が焦っていたら、隣の治が静かに彼女の名を呼んだ。
「何よ、治くん?」
「……雪だ」
「え?」
「雪が降ってきた……」
唖然と呟く治の言葉に、そんな莫迦な、って空は視線を上に向ける。
ひらひら、ひら、と雲が少ない青空から舞い降りてきたではないか。
こんな真夏に、青空が広がるこの空の上から。
そんな莫迦な、と思う間もなく、辺り一帯は吹雪に見舞われ、あっという間に雪が降り積もった。
その年の夏は、地球全体がおかしかった。
東南アジアでは全く雨が降らず、水田が枯れ、中東では大雨による洪水が発生。
アメリカでは記録的な冷夏となった。
サマーキャンプにいた9人は、何も知らずにいた。
それが、誰も知らない世界での、冒険の始まりになることを。
空に連れられた大輔とヒカリは、猛吹雪のせいで方向感覚を失い、視界に映った階段を駆け上る。
治は、いなかった。吹雪いた瞬間に抱えていた枝の束を捨てたかと思
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ