第13話 帝国領侵攻
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イゼルローンを橋頭保と為し、ここから帝国領深く侵攻する。さすれば帝国軍は狼狽し為すところを知らないでしょう。同盟軍の空前の大艦隊が長蛇の列を成し、自由惑星同盟正義の旗を掲げて進むところ勝利以外の何物もあり得ないのです」
「しかしその作戦では隊列があまりに長くなり、補給にも連絡にも不便をきたすことになる。しかも敵は我が軍の細長い側面を突くことにより、容易に我が軍を分断することができる」
得意気に持論を語るフォークに、ヤンが反論する。
「なぜ分断の危機のみを強調するのか小官には理解致しかねます。我が艦隊の中央部へ割り込んだ敵は前後から挟まれ、集中砲火を浴び惨敗することは疑いありません。ヤン中将の仰ることは取るに足らぬ危険です」
だが、フォークは気にも留めない。
彼は敵が自分の思惑通りに動くと信じて疑っておらず、それ以外の可能性を考慮しようともしない。
「いや、帝国軍の指揮官はおそらくローエングラム伯となる。彼の軍事的裁量を考慮に入れて、今少し慎重な計画を立案すべきだ」
「ヤン中将、君がローエングラム伯を高く評価していることは分かる。だが彼はまだ若い、失敗することもあるだろう」
「それはそうです。ですが彼が犯した以上の失敗を我々が犯せば、彼が勝って我々が敗れるのです」
「それは予測にしか過ぎませんなヤン中将。敵を過大評価し必要以上に恐れるのは武人として最も恥ずべきところ。ましてそれが味方の士気を削ぎ、その決断と行動を鈍らせるとあっては、いわば敵を利する行為でありましょう。どうか注意されたい」
「フォーク准将! 貴官の今の発言は礼を失しておるぞ」
「どこがです?」
「貴官の意見に賛同せず、慎重論を唱えたからといって利敵行為とは何だ! それが節度ある発言と言えるか!」
「私は一般論を申し上げただけです。一個人に対する誹謗と取られては甚だ迷惑です! そもそも、この遠征は専制政治の圧政に苦しむ銀河帝国350億の民衆を解放し救済する崇高な大義を実現するためのものです。これに反対する者は結果として帝国に味方するものと言わざるを得ません。小官の言うところは誤っておりましょうか? 例え敵に地の利有り、あるいは想像を絶する新兵器が有ろうとも、それを理由として怯むわけにはいきません。我々が解放軍として大義に基づいて行動すれば帝国の民衆は歓呼して我々を迎え、進んで協力するに違いないのです。さすれば、この戦いは――」
一人嬉々として演説を始めたフォークに諸提督たちは嫌気が差し、その後会議は消化試合の如く進み終了した。
結局、この作戦会議において、帝国領侵攻作戦の実態は何の戦略的意義も無い行き当たりバッタリの作戦でしかないということがハッキリしただけであった。
* * *
自由惑星同
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