どこかで会った、ような?
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「じゅ、11……?」
まどかが目の前のゾンビから、唯一探し出したその手がかりがそれだった。
額に『11』と記された紳士のゾンビ。老眼鏡が特徴のゾンビは、ほむらから預かった拳銃を向けられてもびくともしなかった。
それどころか、少しずつにじり寄ってくる『11』。
「こ、来ないでっ!」
ペタンと座り込みながら、震える銃口を『11』に向ける。しかし、彼は一切ペースを崩さず、こちらに近づく。
「い、いやああああああああ!」
まどかは頭を押さえ、悲鳴を上げた。
しかし、空しく残響するだけの赤黒の空間に、救いの手などあるわけもなかった。
しかし、いつまでたっても苦痛の音は聞こえてこなかった。
恐る恐る見上げると、ゾンビの『11』たらしめる額の数字が、風穴となっていた。
脳を貫かれ、ドサリと倒れるゾンビ。彼の背後には、拳銃を構えたままのほむらがいた。
「ほむらちゃん……」
「貴女は……どこまで愚かなの……?」
ほむらはゾンビの死骸を蹴り飛ばし、まどかへ詰め寄る。
「言ったはずよ! 教室から動かないでって! ここがどれだけ危険か、分かってるでしょ!」
無表情を崩さないほむらが、顔をくしゃくしゃにしていた。
まどかはそんなほむらにおびえながら、口走る。
「だ、だって……他にまだ逃げ遅れた人がいるかもしれないし……教室には、何も入ってこなかったし……」
「それで貴女に何かあったらどうするの? 貴女を失えば、それを悲しむ人がいるってどうしてそれに気付かないの? 貴女を守ろうとしてた人はどうなるの?」
「でも、ほむらちゃんだって頑張ってるし、私も何か役に立てるかなって……」
「役に立たないとか、意味がないとか、勝手に自分を粗末にしないで! 貴女を想う人のことも考えて!」
そのままほむらは、まどかの胸元に顔をうずめる。彼女の「無事でよかった……」という小声に、まどかは思わず尋ねる。
「ねえ、ほむらちゃん……私たち、前にどこかで会った?」
「!」
たった数週間の仲に対する想いではない。そう考えての発言だが、ほむらはそれに対し、大きく目を見開いてこちらを見ていた。
「わ……わた……」
私は。ほむらが、何かを伝えようとしている。言葉が喉に詰まったように、息が漏れている。
「ほむらちゃん?」
「まどか……私は……」
その時、まどかは気付いた。
「ほむらちゃん……泣いてるの?」
滝、と呼べるものでもない。ほんの一点の雫が、彼女の頬を伝っている。
どうして、と問いただそうとしたとき。
ほむらの表情が、泣き顔の少女から、戦士の物へと変貌する。
すさかず拳銃で、彼女の斜め後ろ方向へ発砲。
誰かがいたのかという問いの
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