第1部
アッサラーム〜イシス
砂漠の町
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砂漠の真ん中にあるオアシスの国、イシス。ここははるか昔からすでに大国として栄えており、砂漠を越える旅人の休憩の場であると同時に、この地域では伝統的な石造りの家々が建ち並ぶ、歴史的価値の高い町でもある。
そんな歴史ある町イシスに到着したころには、日はすっかり沈んでいた。この時間にお城に行っても門前払いされるだけだと判断したユウリは、翌日にお城に行くことを宿屋の中で話した。
その後皆でピラミッドに関する情報を得るため手分けして町を回ると言う話になったのだが、どうにも頭が回らない。砂漠の暑さと魔物との戦闘で疲労がピークに達したのか、彼の話を聞き終えて部屋に入った途端、張り詰めた糸が切れたかのように、私は力なくベッドに身を預けた。
砂漠の町の宿屋は手狭ながらも珍しく個室で、ベッドもいたってシンプルだ。木製の枠組みに敷物をかけただけの簡素な作りである。それでも長旅で疲れた私たちの体を休ませるのには充分だった。
そして一夜明け、私は宿泊した宿の玄関外で、まだ日の出ない薄闇の中、震える声で呟いた。
「うう〜、寒い。まさかこんな町の中でも寒いなんて」
砂漠の朝は寒い。昼間のあの暑さはなんだったのだろうと疑ってしまうほど、この地域の寒暖の差は激しいのだ。
そのあまりの寒さに想定外の早起きをしてしまった私は、眠気覚ましに外でトレーニングをしようと思い、思いきって外に出た。けれど外は部屋よりも格段に寒く、しかも今日は風が強いのか、冷気を含んだ鋭利な刃物のように、寒さが体を刺していく。私は一刻も早く体を温めるため、震えた体を抱きしめながら、小走りに町を駆けた。
走りながら見える町並みはどこも静まり返り、時おり吹く砂混じりの風が、この町の気候の厳しさを物語っていた。
宿から少し離れると、何やら風を切る音が聞こえてきた。音のする方へ向かっていくと、少し開けた空き地に見慣れた人物が一心に剣を振っている姿があった。
あれは、ユウリ!?
幸い向こうを向いているのでこちらに気づくことはないが、あの後ろ姿は紛れもなくユウリだ。どうやら彼も早朝のトレーニングを行っているらしい。私も相当早く起きたつもりだったのだが、一体ユウリはいつからやっているのだろうか。
声をかけるべきか迷ったが、トレーニングを邪魔する訳にもいかないし、話しかけたらかけたで何だか怒られそうな気がするので、黙ってこの場を去ることにした。
ユウリの姿を見てなぜか不思議とやる気が漲った私は、別の場所で鍛練を行うことにした。人に見られるのは恥ずかしいので、なるべく人通りの少ない場所を選ぶ。ちょうど木々が周りに囲われてある場所があったので、そこでトレーニングを始めることにした。
師匠に教えてもらった体術、魔物相手を想定した組手など、今自分ができる技を昇華
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