第23話 現ならざる地
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ば後やるべき事は一つなのだ。それを迷わずに士郎は執り行う。
「電導烈波──」
そして、彼は剣を振りかぶりながらそのまま言い切る。
「次元断!!」
全て言い切りながら、彼は宙でその雷の剣を切ったのであった。
すると、それは起こったのである。何と、その剣が何もない宙を、まるで布を切るかのように切断してしまったのだ。
それは正に、士郎の大邪の力により生み出された剣が、『空間を斬る』という絵空事のような暴挙を成し遂げてしまった事に他ならないのであった。
その斬られた空間の先からは、得体の知れない空気が流れてくるのが分かった。それは、この先こそが異空間『黄泉比良坂』である事を証明しているかのようであった。
そして、当の偉業をやってのけた士郎は、間髪入れずに千影と姫子に言う。
「それじゃあ、早く行こう! この次元の裂け目はそう長く持ってはいられないからな」
「そうね、急ぎましょう」
「そうだね」
そう口々に言葉を返した三人は頷き合うと、後は余計な口数を並べずにその裂け目の中へと飛び込んで行ったのだ。その非現実へと足を踏み入れる事への恐怖も、今は意識しないで前へと進むだけなのだった。
◇ ◇ ◇
そして、巫女二人と騎士一人が辿り着いたのは、正にこの世とは掛け離れた空間であるのだった。
紫のグラデーションの空に、サーモンピンクの地面。そのような歪な場所は、現実の世界にはないが故に、否応にもこの空間が異空間だと思い知らされる事となるのだ。
しかし、それは同時にストーリーが大いに盛り上がるタイプのRPGだとお眼に掛かれる事もよくある、『異世界への突入』イベントそのものであり、それは本来ならそういう作品が好きな姫子が喜ぶような展開だとも言えよう。
だが、今回ばかりは姫子はそれを自重していたのであった。今起こっているそれは、ゲームの出来事ではなく、実際に起こっている事なのだから。
そう、これは遊びではないのだ。大邪との決着を着け、元の平和を取り戻し1200年の因縁に蹴りを着ける為の戦いなのである。
故に一向は異世界冒険という好奇心を刺激するような展開を享受する事なく、一切の寄り道もなく『目的の場所』まで辿り着いていたのであった。
そして、三人は既に戦闘の為の出で立ちとなっていた。千影と姫子はそれぞれ赤と青の袴の巫女装束に、士郎は純白の外套とスーツといういつもの通りの格好なのだった。
その状態で今のこの場所を三人は見る。そうすればこの異空間ではかえって悪目立ちするような、荘厳な城のような建造物が眼前に見えているのであった。
そう、そこは……。
「ここが、泉美ちゃんの言っていた大邪の居城みたいだね」
「ああ、間違いないだろう。発信機の信号は、ここから来ているからな」
姫子の言に対して、士郎は相槌
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ