暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第八十話六芒郭顛末(上)
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、と新城は唇を歪めた。
「欲には際限がない――人足るを知らざるを苦しみ、既に駒を平らげても、関を望むものだ。
だがまぁ西原の懐にまで手を突っ込むつもりはない。必要がない限りはね」
必要があるなら突っ込む野は変わらんでしょうに、と鼻を鳴らし藤森は答えた
「それならそれで、かまいませんがね。奴も私も貴方もこの大げさな芝居の幕が降りるまでにあっさり死なないようにしましょうや」
 先遣支隊が六芒郭に接近するのはその翌日の事であった。


十月十日 午後第五刻 六芒郭包囲網警戒線より約半里
支隊本部 先遣支隊 支隊長 馬堂豊久大佐

 包囲網からそれた小寺の中に彼らはいた。支隊の将校達が集まり、最後の確認を行っている。
「‥‥さて、支隊長の構想を説明しよう。首席幕僚」

「改めまして首席幕僚の大辺です、構想を説明します
我々の目的は新城支隊の六芒郭からの脱出を支援する事です」
「現在、六芒郭の包囲に専従している部隊はおおよそ15万、誘因行動により東方辺境領軍の大半が虎城防衛線へと移動しております。ですが当たり前といえば当たり前ですが実質的に攻略戦に動員される部隊の数はさほど変わりません。
布陣は薄く広くはならず、狭く、強固なものとなっております、主攻正面である南方に本営が置かれ、最も強固な防衛態勢を整えております。
我々はここを叩き、指揮能力を一時的に麻痺させることが目的となります」

「はい、我々は突破先鋒として連隊鉄虎大隊と第一〇五鉄虎大隊、そして捜索剣虎兵第十二大隊と支隊本部直下部隊がそれを支援。そして独立混成第十四聯隊銃兵第一大隊により退路の確保を行います。
我々は敵本営を強襲、新城支隊は我々が攻撃を開始した小半刻後に突破を開始します」

「本営の位置は」「”噂話”と新城支隊の導術観測を比較した結果、六芒郭より南南東六里に位置しています」

「砲兵隊は護衛と後方支援部隊と共に後方に拘置、包囲網から離脱後に投入します。
以後は駒州軍司令部に指示に従い、後退します」

「第十二大隊は、支隊本部とともに中衛という事ですね」
 鵜灘少佐は細い顎を撫でながらニヤリと笑った。
「支隊長殿のいくさぶりを間近で拝見させていただきましょう」
 馬堂大佐は微笑を浮かべて軽く手を振って答えた
「さて、支隊長殿、作戦開始にあたって訓示を」

「‥‥ん」
 傾いた陽光を浴び、若い大佐が前に出る。
「さて諸君、我々は国家暴力の構成員である、即ち法と理性と倫理に基づき暴力を振るうものである」
 淡々とした、それでもよく遠く声が響く。
「法とは即ち明文化された責務であり権利であり軍という組織の存在根拠である。
理性とは道理であり、我々の行動の正当性を保証するものである、
倫理とは組
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ