暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは〜無限の可能性〜
第8章:拓かれる可能性
第253話「再臨」
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スへと視線を向ける。
 イリスは忌々しそうに優輝を……否、先程までもう一人のイリスがいた場所を睨んでおり、こちらに仕掛けてきてはいなかった。
 だが、無防備という訳ではない。
 攻撃しようとすれば、容赦ない反撃が来るだろう。

「……“倒す”とは言わないのね」

「ああ。どうあっても()イリスを倒すのは無理だ」

 椿の言葉に、優輝はそう答える。
 それは、勝てる勝てないではなく、“倒す”事自体が不可能だと物語っていた。

「ミエラとルフィナは他を頼む。イリスは僕がやる」

「承りました」

「では、そちらはお任せしますね」

 多くを語らず、ミエラとルフィナは背中の羽をはためかせ、飛んだ。

「行かせませ―――ッ!?」

「えっ……?」

 刹那の間だった。
 ミエラとルフィナを止めようとしたイリスが、咄嗟に体を逸らす。
 すると、寸前まで上半身があった所を優輝の蹴りが薙いだ。
 特別速い訳じゃない。十分速いとはいえ、緋雪なら同じ速度を出せる。
 だが、緋雪と優奈、祈梨以外は目で追う事すら出来なかった。
 緋雪も、同じ事をされれば絶対に避けられないと思える程だった。

「今のは……?」

「……無意識の隙を突いた攻撃よ」

「なっ……!?いくら優輝でも、そんな事が!?」

 司の呟きに、優奈が答える。その答えに椿が驚愕する。

「知っているの?かやちゃん?」

「……一応ね。いくら意識しても、どこかに隙がある。それが無意識の隙。……要は、認識されないように動いたのよ、優輝は」

「その通り。つまり、目の錯覚とかと似た現象を利用しているのよ。近づいているのにそうと気づけないように……例えるなら、“コリジョンコース現象”のような、ね」

 コリジョンコース現象とは、見晴らしのいい十字路で起きる現象だ。
 車が二台、同じ速度で交差点に差し掛かると、衝突寸前まで近づいてきている事を認識できず、ぶつかってしまうという。
 それと似たように、優輝はイリスに接近し、攻撃を繰り出していたのだ。
 元々のスピードに加え、そんな無意識の隙を利用したために、このようにほとんどが見る事すら出来なかった。

「でも、この状況じゃあ、それこそ霊術とかを利用しないと出来ないはず。……優輝は、それを単なる動き方だけでやったと?」

「さすがに理力を利用しているわ。……でも、後は導王流を使っただけ。一部の武術は、極めればああいった事が出来るのよ。今回は、それを理力で昇華させた訳」

「……なのはの“神速”も、似たもの……?」

「そうね。身近に同じような事が出来る流派がいたわね」

 知覚外の速度で動く“神速”。
 あれも認識されないように動いている技だ。
 

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