第12話
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全国各地で、激しい雷雨に晒されたある日。
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
人気のない、僅かな街灯が照らされた夜の道を、男は走る。
身体は芯から冷え切り、息は絶えながらもその歩みだけは止められなかった。理由だけ述べるなら、男は狙われていた。得体の知れない、悪魔の如き異形に。
『無駄な事を……早く楽になれば済むものを……』
「なんなんだよ一体…………!!」
暗闇の中で曇った異形の声。姿こそ見えないが、その事が男の恐怖心を更に煽る。尚も逃げ足を早めようとするが、光がほとんど入らない夜道であったこと、思考を恐怖に支配されていた為に、道に少しだけ出来ていた段差に引っかかり、男は泥を辺りに撒き散らしながら転倒してしまう。
倒れた痛みから這い上がれない男を見下ろしながら、'ナニカ'は尚も男に呟く。
『全く……俺の手を煩わせるな』
「ぁっ…………」
闇に隠れた何が、不愉快でたまらない、と言わんばかりに呟く。
何もしなければ、自分が殺られる。現に、遠かった自分以外の足音が、少しづつ、大きくなってきてる気がしている。そう直感的に悟った男は痛みなど構わずに立ち上がる。
「うわぁぁぁああああぁあああああっっ!!!!!」
咆哮を轟かせ、その身を真紅と黒の異形ーー『アナザーファイズ』へと変え、声の聞こえる暗闇に隠れた何かへと突貫していく。
間髪入れず、アナザーファイズは宙へと舞い上がり、右脚を闇に包まれた場所と突きつけ、ポイントマーカーを射出させる。
『でやあぁあああああ!!!!!』
『……』
万物もその身を朽ち枯らす毒の一撃。その一撃を見て、暗闇の中にいた'ソレ'は手をかざしてーーー。
手をかざしたと同時に、灰色のオーロラが現れる。アナザーファイズはその一撃を浴びせることなく、地面へと失墜する。何処へ消えたかと、周囲を見回すアナザーファイズ。
直後。背後からの嘲笑にも似た笑い声。
『残念だったなぁ……ぬァァっ!!!』
落雷の光で'ソレ'の姿が露わになるのと、ソレの必殺の一撃を秘めた右脚がアナザーファイズの胴体を捉えたのは全く同じであった。
不意打ち同然の攻撃にアナザーファイズは数十メートル先まで吹き飛ばされ、男の姿へと戻る。
「ぁっ……ぐぁ…………」
意識が朦朧とする。骨は何本か折れ、多分内蔵も幾つか破裂しているのをうっすらと感じる。足にいったっては、人間の構造上有り得ざる方向へと曲がっていた。
『……そう悲嘆するな。精々、俺の道具になってもらおう。……フフフ……アハハハッッッ!!!』
先程、自らに致命傷を負わせた悪魔の異形が近づいてくる。頭部両脇から巨大なツノのような突起が横に向かって長く伸びており、頭部上部に
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