第42話「鋼の腕の伴奏者」
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とも。ネフィリム相手だと、Model-GEEDじゃ分が悪い。だったらいっそ、外した方が楽だろう」
ツェルトの足元には、ウェルに踏まれて凹んだModel-GEEDが転がっていた。
「痛みのあまり、遂に狂いましたか」
「いいや、俺は至って冷静だよ。怒りで頭が冷える事もあるんだな?」
そう言ってツェルトは、眼光鋭い双眸をウェルへと真っ直ぐに向ける。
その視線は、追い詰められた餓狼の如く。
ウェルは思わず後退りそうになりながらも、なんとか冷静に努めようとする。
普段から他人を振り回している彼だからこそ、相手のペースに乗せられる事の恐ろしさはよく理解している。ここで呑まれれば負けなのだ。
「ですが、ギアなし片腕のみの君じゃあ僕には勝てないッ!今だって、もう立っているのがやっとなんでしょう?」
「ああ、確かに片腕じゃお前のネフィリムとはやり合えないな……。だが──」
ツェルトはそう言って、LiNKERの入った無針注射器を取り出す。
怪訝な表情となったウェルに思いっきり口元を釣り上げた笑みを向けて、ツェルトはそれを肘までしかない右腕へと注入した。
「力を寄越せ……“ネフィリム”ッ!!」
「ッ!? それは、まさか……ッ!?」
ツェルトが何をしたのか察したウェル。驚愕が広がるその顔を、ツェルトは意趣を返すように笑う。
「ここに来る前に、お前のラボからくすねて来たんだよ……。英雄になった後で少しずつ、ゆくゆくは全身に馴染ませていくつもりだったんだろ?」
「僕のLiNKERを勝手に……ふざけるなぁぁぁぁぁッ!」
自らの悲願を果たすべく用意したそれを勝手に使われ、ウェルは激昂しながら殴りかかる。
だが、ウェルが腕を突き出す瞬間、ツェルトの右腕はそれを受け流し、裏拳を命中させていた。
「ごッ!? く……ッ、まさか……失った右腕にネフィリムを適合させるとは……ッ!」
ウェルが使用したものと違い、未調整のLiNKERによるネフィリムとの適合。
移植されたネフィリムの細胞は、激痛を伴いながらツェルトの細胞と融合し、脳に残る体組織のマップに従い失われていた右腕を形作っていく。
幻肢痛の原因とされているものの一つに、「脳による認識の未更新」というものがある。
人間は無意識に体組織の位置を、脳内でマッピングしているのだが、幻肢痛は失った体の部位に対する認識が更新されず、その部位を失う前との感覚の齟齬が痛みを引き起こすらしいのだ。
だが、今回に限ってはそれがプラスに働いた。
ツェルトの右腕に融合したネフィリムの細胞は、その認識に従って新たな右腕へと形成されたのだから。
「セレナをあんな目に遭わせ……マリィを泣かせた存在……俺にとって、ネフィリムは忌むべき力だ…
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