第42話「鋼の腕の伴奏者」
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─」
「は……──んんんッ!?」
爆煙の中から響き渡る、マリアの新たな聖詠。
「ぬっ!?」
直後、煙を吹き飛ばして姿を現したのは、球状のエネルギーフィールドに包まれた装者と伴装者、そしてマリアの姿だった。
その胸にはセレナの形見のペンダント。胸の歌の名は、“望み掴んだ力と誇り咲く笑顔”。
遂にマリアは己の殻を破り、生まれたままの感情で唄う。
「調がいる……切歌がいる……マムも、セレナもついている……そして、ツェルトも頑張っている……。みんながいるなら、これくらいの奇跡、安いものッ!」
「行けるな? 翔ッ!」
「ああッ! 奏でようか、胸の歌をッ!」
「託す魂よ 繋ぐ魂よ──」
新たな胸の歌……絶唱と同じメロディーで奏でられるその詩の名は、「始まりの歌」。
翔と純が奏でる伴奏に合わせ、装者たちは響から順に唄い始めた。
「装着時のエネルギーをバリアフィールドにッ!? だが、そんな芸当……いつまでも続くものではなあいッ! 絶唱9人分ッ! たった9人ぽっちで、すっかりその気かああああッ!?」
「果たしてそうかな?」
「……ッ!?」
足元から聞こえたその声に、ウェルはギクッと肩を跳ねさせる。
そして足元に目を向けた瞬間、腹のど真ん中へと勢いよく、ツェルトの足が叩き込まれた。
「ご……ッ!?」
腹を押さえながら、後方へとよろけるウェル。
その目の前で、彼はゆっくりと立ち上がった。
「ま……まだ立ち上がる気力が残っているというのかッ!?」
「ッたりめぇだろ……。こちとらまだまだテメーを殴り足りてねぇんだよ……ッ!」
立ち上がったツェルトの纏う戦装束は、先程までの赤と黒……ではなく、黒いインナーと無骨な鈍色のプロテクターへ変化していた。
それを見たウェルは、ツェルトの意図を察して嘲笑う。
「RN式を停止させる事でネフィリムの捕食対象から外れつつ、Anti_LiNKERの負荷からも脱する……。確かに聖遺物のエネルギーを蒸着していないプロテクターなど、ネフィリムにとっては味のしないガムも同然。しかァァァしぃ! 果たしてただ硬いだけのスーツ一つで、僕に勝てると思っているんですか? おめでたいですねッ! この腕の腕力は、さっき君も味わっただろう? そのままもう一度ぶっ飛ばして、今度はその右腕を握り潰してしまえば君は──」
「俺の右腕が、なんだって?」
「ッ!?」
そこまで言いかけて、ウェルはある事に気が付く。
陰に隠れたツェルトの右腕の肘から先……そこには、あるべきはずのものがないのだ。
不自然に短いツェルトの右腕。ウェルの顔に困惑の色が広がっていく。
「ば、馬鹿な……義手を……ッ!?」
「ああ、外した
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