第一章
[2]次話
イマモ
熊本県天草の島下島には奇妙な話がある。
血だらけの人の手や首が出て来て峠などでごろごろと転がってくるのだ。
その話を聞いてだ、大阪から来ている女子高生の中村優子と芹沢由紀はまずは自分達が泊っている旅館で湯舟に浸かりながら話した。
「そんな話な」
「絶対にないな」
「そや、ないわ」
優子は笑って話した、小柄で背は一五二程だ。少し茶色を入れている髪の毛を伸ばしウェーブをかけている。はっきりした目で口は大きくそこから八重歯が見えている。
「妖怪が出るとか」
「ここもな」
由紀も言う、黒髪を長く伸ばしている。垂れ目であり顔立ちは優しい感じだ。背は一六〇位であり優子の明るい感じに対して由紀は優しい感じだ。
「開けてるし」
「山にもいつも人おるし」
「妖怪がおるってな」
「そうした場所ってあれやん」
優子も妖怪の存在は否定しない、だがそれでもというのだ。
「人がおらん場所や」
「廃墟とかな」
由紀も言う。
「深い山とか沼とかな」
「そうした場所に出て」
それでというのだ。
「人がおるとこにはな」
「出んわ」
「そやそや、幽霊かてや」
優子は湯舟の中で自分と一緒に浸かっている由紀に話した。
「人気のおらんとこに出るし」
「妖怪もな」
「一緒や」
彼等にしてもというのだ。
「そこは」
「そやな」
「それでや」
だからだというのだ。
「人が結構通るとこにな」
「出る筈ないわ」
「昔は人も少なかったやろけど」
「今はちゃうし」
「この天草も結構な観光地になってるし」
「それはないわ」
「というか」
ここでだ、優子は少し真剣な顔になって優子に話した。
「ここ天草はな」
「島原とやな」
「天草四郎さんでな」
「島原の乱やな」
「私あの映画観たで」
優子は今度は少し青くなった、湯舟の中だがそうなった。
「昔の方な」
「ああ、ジュリーさんが出てる」
「あの映画の対決の場面でな」
「それ私も知ってるわ」
由紀も湯舟の中でも青い顔になって話した。
「燃え盛る火の中にな」
「見えたから」
「これ有名な話やな」
「それでな」
だからだというのだ。
「私むしろな」
「この辺りやとやな」
「人気のおらんっていうかあのお城でな」
そこでというのだ。
「出るんちゃうかってな」
「幽霊が」
「そっちの方が怖いな」
「今回そっちは行かんやん」
由紀は怖がる優子にこう返した。
「そやからな」
「心配ないか」
「ないな、そやからな」
それでというのだ。
「私等は純粋に観光楽しんだらええわ」
「そういうことやな」
「それでな」
由紀はさらに話した。
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