第四章
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「そうなったらしい」
「そうだったんですね」
「まあ実際相当馬鹿な奴だったみたいですね」
「馬鹿だから妖怪に殺された」
「そうなったんですね」
「そうみたいだな、そんな馬鹿みたいになりたくなかったらな」
それならというのだ。
「いいな」
「はい、ともづなを下ろさないで」
「寝る時は苫の茅を服の上に三本置く」
「そうしないと駄目ですね」
「ああ、絶対にな」
こう周りに話していた、その周りの中には裕司もいてやはり磯女はいるのだと思った。だが思っただけで。
確信出来るものはなかった、その目で磯女を見た訳ではなかったからだ。気配と言っても自分で認めるまでに勘の悪い彼にわかるものではなかった。
だがある日のことだった、不意に。
五月の霧の深い夜に漁をしていた、そこで綱元は船員達に言っていた。
「いいか、夜だし霧もあるからな」
「周りに注意してですね」
「漁をすることですね」
「そうだ、絶対に海には落ちるな」
このことも注意するのだった。
「普段の時より見付かりにくいからな」
「霧が出ている分だけ」
「それだけですね」
「それに他の船が来たらぶつかることもあるからな」
このことについても言うのだった。
「だからな」
「それで、ですね」
「今はですね」
「余計にですね」
「灯りは全部点けてしかも一番強くしろ」
そうして周りに自分達の船がここにあることを知らせろというのだ。
「いいな」
「わかりました」
「そうしていきます」
「さもないと本当に危ないですからね」
「そうしていきます」
「そうしろ、それで獲るものを獲ったらすぐに帰るぞ」
こう言ってだ、そしてだった。
綱元は漁を続けさせた、その中には裕司もいて彼もせっせと働いていた。動きは決して速くはないが真面目に働いている。
裕司はこの時網を使っていた、すると。
不意に何処からかだった。
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