第一章
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流人
四代将軍徳川家綱がまだ元服しておらず幼名である竹千代という名であった時のことである。
竹千代はふと周りの者達に問うた。
「世には遠島の罪があるな」
「はい、罪を犯した者をです」
「多くは死罪になるところをその罪を減じてです」
「島に送り処罰としています」
「その様にしております」
周りの者達は竹千代にすぐに答えた。
「死罪ではありませぬが重い処罰です」
「昔で言うと隠岐や土佐に流す様なものです」
「もう人が来ず出られぬ」
「そうした場所に送るものです」
「わかった、重罪人ではあるがだな」
竹千代はここまで聞いて述べた。
「死罪にするまではなく」
「入牢にするには罪が重く」
「それで、です」
「八丈島等に流します」
「そうします」
「それはわかったが」
それでもとだ、竹千代はここでこう言った。
「その者達は何を食しておるか」
「罪人達が、ですか」
「遠島になった者達が」
「何を食しておるか、ですか」
「うむ、牢では飯が出るな」
竹千代もこのことは知っていた。
「しかと。しかしじゃ」
「遠島になった者達は、ですか」
「何を食しておるか」
「そのことでありますか」
「一体何を食しておる」
竹千代は再び周りの者達に問うた。
「それで」
「さて、何を食しておるか」
「島にあるものを適当ではないでしょうか」
「畑で何か作っておるのでは」
「我等も食うなとは言っておりませぬので」
「それでは」
「誰も知らぬのか」
要するにそういうことだとだ、竹千代は理解した。
「そうなのか」
「はい、実は」
「竹千代様に言われるまで」
「そこまではです」
「考えておりませんでした」
「それはよくない」
竹千代は遠島になった者達に食事を与えていないと考え言った。
「その者達の命を助けたのであろう」
「はい、確かに」
「死罪を減じてです」
「そのうえで島に流しております」
「それを仕置きとしています」
「そうであろう、ならな」
命を助けた、それならばというのだ。
「食事を与えるのが道理ではないか」
「牢に入れている者もそうなので」
「だからですか」
「それで、ですか」
「遠島になった者達にもですか」
「牢に入れても餓え死にせよとは言っておらぬ」
この者達もというのだ。
「なら遠島になった者達も同じであろう」
「だからですか」
「この度は、ですか」
「遠島になった者達についても」
「考えるべきではないのか」
こう周りの者達に言うのだった、すると。
その話を聞いた父であり将軍である徳川家光は大いに笑って言った。
「それはよきこと、遠島とはいえな」
「命を助けたのですから」
「ならばですか」
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