第1部
アッサラーム〜イシス
偏屈な客
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っぽを両手でしっかりと握りしめると、
「こ、これはわしの唯一の拠り所なんじゃ!! 誰にも渡さんぞ!!」
そう言って、自分がウサギにでもなったんじゃないかというくらい小さく怯えながら、拒絶の反応を示した。
その様子があまりにも必死だったので、不憫に思ったのだろう。半ばからかい交じりだった二人は、これ以上言うのをやめた。
「そ、それじゃあヴェスパーさん。また何かあったら来ますんで」
ルカが最後に挨拶をして、私たちは祠を後にした。振り向くと、ヴェスパーさんはずっと怯えたような目でこちらを見つめている。う〜ん、やっぱり変わった人だ。
「最後まで変なやつだったな」
ナギが何とも言えない表情で呟くと、ユウリが鼻を鳴らした。
「ふん。取り合えず、もうここには用はない。一旦町に戻って情報収集するぞ」
太陽も大分傾き始め、昼間の暑さとはうって変わって空気がひんやりとしてきたのだが、未だに砂漠の気候は慣れない。
鍵の場所はわかった。あとは、どうやってピラミッドの中に入るかだ。
「えと、あのー、皆さん。本気でピラミッドの中に入るつもりですか?」
行く気満々の私たちに、おずおずと口を挟むのはルカ。
「ああ。別にお前を連れていくつもりはない。アッサラームに着いたらそこで別れるつもりだ」
「いや、そうじゃなくて……。師匠たちから聞いた話だと、ピラミッドって仕掛けだけじゃなくて、魔物も沢山いるらしいですよ」
「まあ、砂漠にこれだけ魔物がいるんなら、ピラミッドにいてもおかしくないだろ」
しれっと答えるユウリ。けれど憂いの表情を浮かべたルカは、控えめだが力強い調子でさらに言い募る。
「でも、さっきのムカデよりももっと強い魔物がいるそうです。それにウワサでは、ピラミッド内部のどこかに呪文の一切効かない場所もあるらしくて、最近はほとんど誰もがそこに近寄ることすらしないそうです。……それでも行くんですか?」
「当たり前だ。俺たちの目的は魔王を倒すこと。そのために必要なアイテムならば、手にいれるのが当然だろ」
「そうですが……」
それでもなお言おうとするルカに、私は違和感を感じた。すると、シーラがルカの隣に寄ってきた。
「るーくんはさ、おねーちゃんが心配なんだよね?」
え?
シーラが俯くルカの頭を撫でながら優しく話しかける。ルカは恥ずかしそうにしながらも、小さく頷いた。
「あー、さっきの戦闘で逆に不安にさせちまったってことか? まあ、オレも大口叩けるほどレベル高くはねーけどよ、こいつら守れるくらいはできるから。そんな心配すんなって」
ナギも察したのか、にっと白い歯を見せながら、私とシーラを指差した。
ああ、そっか。さっきの火炎ムカデとの戦闘で、かなりてこずってたからな。そのせ
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