第1部
アッサラーム〜イシス
偏屈な客
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今度またここに来たときに仕入れておきますよ。今日は食糧だけで良いですか?」
「嫌じゃ! わしはその尻についてるのが欲しいんじゃ!!」
駄々をこねる子供のように、わめき続けるヴェスパーさん。
「なんだ、ただの変態ジジイじゃないか。やっぱりここで葬り去った方が世の中の為になるんじゃないのか」
手をヴェスパーさんに向け、再び死の宣告をするユウリ。うん、今回は私も止めない。
「別にあげてもいいよ? また新しいのに変えればいいし」
けれどシーラはあっさりと、その『うさぎのしっぽ』を取り外した。
「その代わり、さっきも言ったけど、『魔法の鍵』の場所教えてね?」
「ほ、ほんとか!? 教えるとも! わしの持ってる情報でよければ、いくらでも教えてやる!」
にっこりと、ヴェスパーさんにそれを渡すシーラ。ヴェスパーさんもよっぽど『うさぎのしっぽ』が欲しいのか、先程とはうってかわった態度で快諾した。
その後ヴェスパーさんは態度を改め、私たちを祠に招き入れてくれた。
祠の中は朽ち果てた女神像が転がっており、あとは必要最低限の生活道具が並べてあるだけだった。
草を編んだ敷物の上で車座になりながら、私たちはヴェスパーさんの話を聞くことに。
「それで、お前らはわしに何を聞きたいんじゃ?」
ヴェスパーさんの問いに対し、口火を切ったのはユウリだった。
「今から十年以上前、お前の元にオルテガと名乗る男が来なかったか?」
「……ああ、確か魔王を倒そうとしてるといっとったな。確かにここに来おった」
「その男は俺の親父なんだが、そのとき『魔法の鍵』がどこにあるか尋ねなかったか?」
「ああ。そういえば聞いとったな。魔王の城に行くにはそいつが必要だと言っておった」
「その時、なんでその鍵を渡さなかったんだ? もしあの時親父が鍵を手に入れられたら、今頃世界が平和になってたかも知れないんだぞ?」
ユウリの問いに、ヴェスパーさんは遠い目をしながら答えた。
「『渡さなかった』んじゃない、『渡せなかった』んじゃ」
「どういうことだ?」
ヴェスパーさんは一つ咳ばらいをし、居住まいを正す。
「実を言うと鍵はここにはない。本当はここから北にある、古代の王族が眠る墓と一緒に隠されている」
「古代の王族が眠る墓?」
そう言われても全くピンとこない。お墓と一緒に埋められてるってこと? 師匠がくれた鉄のツメみたいな?
「うむ、世間では『ピラミッド』と呼ばれとるがな。墓といっても規模が違う。なにしろ墓自体がちょっとしたダンジョンよりも広いからな。その建物の中には代々の王族や、その王族が使ってた装飾品や宝が一緒に納められていてな。その宝を手に入れようと、今まで数多の盗賊や魔法使いどもがその
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