第1部
アッサラーム〜イシス
偏屈な客
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をあらわにしていく。
「今日もまたつまらんもん見せに来ただけか。食糧だけ買うからとっとと帰ってくれ」
そう言うとヴェスパーさんは、お金代わりなのか、何やら鳥の羽根のようなものを無造作に置いて、また奥に引っ込んだ。これって家の前に散乱していた鳥の死骸から拾ったものなんじゃ……?
「待ってください! せめてこの人たちの話を聞いてください! この人たちは魔王を倒すため、あなたが知ってる『魔法の鍵』を探しているんです! どこにあるか教えて頂きたいんです!!」
ヴェスパーさんは、顔を出して私たちを一瞥すると、面倒くさそうに鼻を鳴らした。
「ふん。そんなうさんくさい連中とは話なんぞする気にもならん。帰った帰った」
再び奥に引っ込もうとするのを、ユウリが無機質な表情を顕わにしながら呼び止めた。
「おいジジイ。俺たちは魔王を倒す旅の途中で急いでるんだ。お前のわがままで救える命も救えなくなるんだぞ」
ユウリの高圧的な態度に、みたび顔をだしたヴェスパーさんはムッとした表情で返した。
「そんなんわしには関係ないわ。魔王だかなんだか知らんが、これ以上わしの生活を脅かさないでくれ」
この人、本気で自分には関係ないと思っているらしい。さすが、オルテガさんでさえ諦めざるを得なかった人物だけある。
「仕方ない。魔王が世界を滅ぼす前に俺がこの地を焦土と化してやる」
「待って待って!! 早まらないでユウリ!!」
ああもう、誰かこの暴走勇者を代わりに止めて欲しい。
するとそこへ、マントに身を包んだシーラが、ふらふらしながらユウリの横へやって来た。
「うああ〜、暑い〜! 脱ぐ〜!! ユウリちゃん、いったん返す〜!」
普段着なれてないからなのか、マント一枚で暑がるシーラは、急いでマントを外すとユウリに無理やり渡した。
急にバニーガール姿となった彼女を見たヴェスパーさんは、目を真ん丸にして微動だにしない。まるで生まれてはじめて見る生き物を見ているかのようだ。
そして、震える手で彼女を指差しながら、こう言った。
「そ……その尻についてるものをくれ!!」
は?!
皆の目が点になる。ナニヲイッテルンダロウ、コノヒトハ。
「え〜と、さすがにおしりはあげられないかな〜?」
「違う!! その尻についてるふわふわしたものじゃ!!」
言われてシーラは後ろを振り向く。確かに、バニースーツのお尻のところに、丸い毛玉みたいなものがついている。
「それ、『うさぎのしっぽ』ですよね。ヴェスパーさん、あれが欲しいんですか?」
ルカが目のやり場に困りながらおずおずと尋ねると、ぶんぶんと首を縦に振った。
「それだったら
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