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家を継ぐ理由
第一章
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                家を継ぐ理由
 岡崎桃香と櫻良は双子の姉妹である、桃香は茶色の髪の毛を胸まで伸ばし大きな黒目がちの目と細い眉に白い眉と卵型の顔で極めて整った外見をしている、櫻良は優しい顔立ちで大きな垂れ目に目に添った形の眉に黒髪を首と頭の境目の高さで切っている。スタイルは二人共すらりとしているが姉の方が手足が長く目立つ。
 二人共料理部に所属しているがとかく桃香は目立った。
「お姉さんの方の岡崎さん今回もコンクール優勝か」
「高校入学してから幾つ賞獲ったんだ?」
「もうプロ級だよな、お姉さんのお菓子作りの腕」
「物凄いな」
「そうだ、桃香は天才だな」
 雑誌でも乗ることのある美味しいことで有名なケーキ屋でオーナー兼パティシェとして経営している双子の父の功一もこう言った。
「本当にな」
「うん、だからね」
 櫻良は父に項垂れて言った。
「私お菓子作りでは何やってもね」
「桃香に勝てないか」
「正直コンプレックス感じてるわ」
「そういうお前の腕もな」
 どうかとだ、父は娘に話した。背は一六五程で小太りで四角い眼鏡をかけた顔である。
「十分以上だぞ」
「そうなの?」
「というか店はな」
 家業、それはというのだ。
「お前が継いで欲しい」
「えっ、私は」
 どうかとだ、櫻良は父にまさかという顔で返した。
「正直言ってね」
「桃香と比べたらか」
「お姉ちゃん本当に天才だから」
 だからだというのだ。
「もう本場フランスに行ってもね」
「ああ、桃香ならフランスでもトップだ」
「すぐにそうなれるわよね」
「あいつは本当に天才だ」
 お菓子作りのそれだとだ、父は言い切った。
「文句なしのな」
「そうよね」
「作る腕も見事だが」
 それだけでなくというのだ。
「素材を選ぶ目も工夫もな」
「物凄いわよね」
「それでお菓子作りに命を懸けていてずっとやるな」
「情熱も凄いから」
 このこともあってとだ、櫻良はまた言った。
「絶対にね」
「お前もいつもコンクールで入賞しているがな」
「ええ、何とかね」
「銅賞位だな」
「お姉ちゃんは金どころか」
 即ち一番だが、というのだ。
「一番よりも遥かにね」
「上だな、あいつは」
「櫻良は八十五点か九十点ね」
 店でやはりパティシェそして副店長として働いている母の梨華が言ってきた、見れば櫻良の髪の毛の色が父譲りで目元もそうであるのに対して桃香に似た美人だ。髪の毛の色も娘に遺伝を感じさせるものである。スタイルは娘達のものだ。
「はっきり言って」
「だから銅なの」
「ええ、そんなところよ。ただね」
 母はこうも言った。
「桃香は百点もっと言えばね」
「百点以上なのね」
「百五十点はね」
 百点どころかというのだ。

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