第83話『肝試し』
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勢いよく返事をして、晴登たちは暗黒の森の中へと足を踏み入れた。
*
場所は森の中。もう夜も更け、普段であれば静寂の中に僅かに虫の音色が響くだけである。しかし、今宵は違った。
「「うわぁぁぁぁ!!!!!」」
絶叫しながら道を駆けるのは晴登一行。出発前の気概はどこへやら、今は一目散にゴールを目指している。
ナメていた。所詮、学校行事だと侮っていた。これは肝試しなんかじゃない。もはや地獄巡りだ。こんなに怖い肝試しは、生まれて初めてである。
「おい、三浦っ、待ってくれ…!」
「暁君、頑張って走って! 止まってる暇はない!」
「無茶言うな…!」
晴登は振り返りながら、遅れて走っている伸太郎に声をかける。
ここで止まれない理由は、彼の後ろをついてくる存在のせいだ。その数は何十にも達し、見た目はゾンビとゾンビを足して2で割った様な、いわばキメラゾンビといったところか。スタートしてから初めの分かれ道を曲がった辺りで、いつの間にか後ろから迫られていたのだ。シンプルで、それでいて純粋な恐怖。もう逃げることしか考えられない。
「くそっ、こうなったらコイツら全員燃やして・・・」
「それはダメだって暁君! 代わりにこれあげるから!」
「うおっ!? …サンキュ、助かった!」
最終手段をとろうとした伸太郎に、晴登はすかさず"風の加護"を彼に付与した。これでしばらくは彼のスピードも何とかなる。
しかし、いつになったら奴らを撒けるのか。追いつきはしないが、置いてかれもしない。絶妙なスピードでこちらについてくる。ついでに不気味な呻き声を上げているため、気色悪いことこの上ない。
隣を見やると、耳を塞いでいるのか、フードを抑える狐太郎の姿が見える。確かに、彼にはこのホラーは刺激が強すぎるかもしれない。
「三浦、また分かれ道だ! どっちに行く?!」
「え!? えっと・・・」
突如、班員の男子からそう呼びかけられた。晴登は班長なのだから、意見を仰がれるのは至極当然。だが咄嗟に言われて的確に返せるほど、晴登は有能ではない。
「右! とにかく右!」
「「了解!」」
だからとりあえず、「迷ったら右」という先人の教えを踏襲することにする。
そして、全員が分かれ道を曲がり終わった時だった。
「…あれ、ゾンビ達は?」
「いなくなったな。助かったのか…?」
呻き声が突然止んだので振り返ってみると、そこにはもう奴らはいなかった。まるで幻でも見せられていたのかと思うほど、綺麗さっぱり姿を消している。こんなに必死で走ってきたのに、肩透かしを喰らった気分だ。
「ったく、とんでもねぇなこれ…」
「死ぬかと
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