第83話『肝試し』
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辺りはすっかり暗くなり、ひぐらしの声が森の中を木霊する。唯一懐中電灯の微かな灯りだけが、この闇夜を照らしていた。何だか不気味な雰囲気が漂っているが、今からの行事を考えると当然と言える。
「それでは皆さん、班ごとに集まってください。今から肝試しを始めます」
そう、今から始まるのは肝試し。嫌な思い出がフラッシュバックするが、今回は正真正銘普通の肝試し…のはずである。これぞ夏の風物詩。
「それではルールを説明します。今から皆さんには、班ごとにこの森を抜けて貰います。私たちが今居る場所がスタートで、この森を抜けた先がゴールということです。肝試しなので、当然道中は様々な仕掛けが施されています」
「まぁ、ありきたりなルールだな」
「そうだね」
山本の説明を聞きながら、伸太郎がポツリと呟く。確かに、これまでの内容は至って普通の肝試しのそれだ。
いや、別に特殊なものを期待している訳ではないのだが、この学校のことだからどうしても疑ってしまう。
「ただし、この森は一本道ではありません。いくつもの分かれ道が存在しています」
「…ん?」
何だろう、雲行きが怪しくなってきた。もしかして聞き間違えただろうか。分かれ道って…?
「皆さん、迷わないでゴールに辿り着いて下さいね」
「「「えぇぇぇぇ!!!???」」」
今日一番の大声が森中に響き渡る。
なんてこった、やっぱりとんでもない。道が決まってない肝試しなんて、肝だけでなく運まで試されているじゃないか。よくこんな企画が成立したな。
「どう思う? 暁君」
「まぁ迷路にホラー要素が加わったって感じだな。迷えば迷うほど、余計に驚かされる的な」
なるほど、伸太郎の要約はわかりやすい。
しかし、過去の肝試しの経験やお化け屋敷を思い出しても、迷路形式になっていたことはなかったように思われる。これは気を引き締めないといけなそうだ。
「うぅ…怖いな…」
「柊君は肝試し苦手?」
「あんまり経験無いから…」
「そ、そっか…」
やけに怯えている狐太郎にそう訊いてみると、返答に困る答えが返ってきた。ダメだ、彼には何を訊いても墓穴を掘ってしまう気がする。あまりツッコまないようにしようか。
「まぁ今回は色んな意味で怖いかもな…」
晴登は肝試しが苦手という訳ではないが、こればかりは嫌な予感しかしなかった。
*
いよいよ肝試しが始まった。
まずは女子が先にスタートするようで、晴登たちは不安になりながら順番を待っていたのだが、
「「きゃああああ!!!」」
先程から森の中からの黄色い叫び声が絶えない。一体どんな仕掛けがされていたのだろうか
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