第六十九話 強さと弱さ
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しばらく声にならない叫び続けて、やっと少し落ち着いた。
けれどそれは気持ちに整理が付いたんじゃない。単純に叫べるだけの余力が無くなっただけだ。
「ミレイ。話があるんだけど入っていいか?」
ノックの後に、アベルの声がした。
正直今アベルと話せる気分ではないけれど、天空城捜索の旅についての話だろう。それならアベルと話さなきゃいけない。
今のこの感情はあくまで私個人の問題で、アベル達の旅とは何一つ関係ないのだから。
「ええ、鍵は開いてるわ」
「ありがとう、じゃあ入るよ」
ドアが開き、アベルが入ってきた。
その表情は深刻そうで、やはり今後の旅についてだろう。
けどそれにしてはアベル一人がわざわざ私の部屋に来たのが気にかかった。
「私はベッドに座るから良ければ椅子使う?」
「ありがとう。でも僕は立ったままで大丈夫だよ」
「そう、それで話って何?」
「予言の事だ」
あまりにもストレートな言葉に鼓動が強く高鳴った。
「予言がどうしたの?」
少なくとも声は普段通りに振舞ってアベルに尋ねる。
自分でも白々しいと思いながらも聞かずにはいられないのは、せめて自分が考えている事が外れてほしい願望という名の悪あがきでしかないのに。
そしてアベルの答えは私の予想通りだった。
「アイシス女王が君の予言をした後、明らかに様子がおかしくなった。ミレイ、君は女王から何を聞いた?」
結局普段通りに振る舞おうとしたところで、こうしてすぐに見破られてしまう。
私には悩みを悟られないようにする器用さなどない事をこうも突きつけられると、思わず笑ってしまいそうになった。
「…………私は役目を果たす。けれどその代わり悲惨な末路を迎える。そんな事を言われたわ」
一度話し始めると、また不安がふつふつと心から沸き上がってきたけれど何とかそれを堪える。
「それで様子がおかしかったのか」
「…………そうよ。我ながら不甲斐ないわね」
自虐しているうちに、いつの間にか視線が下を向いている事に気付いた。
「もう、14歳じゃないのに」
「ミレイ」
アベルの声に顔を上げる。
私を見据えるその瞳はどこまでも揺らぎなかった。
「君がこうして不安や困難に苛まれるのは一度や二度じゃない。けどその度に君は乗り越えてきた」
「けれど私は…………」
「不安になるのもわかる。だけど、僕はミレイの強さを信じてる。だから予言だってきっと乗り越えられる」
そんな根拠どこにもないし、不安が消えたわけでもない。
けどその言葉にはどこか説得力があった。
「不安に負けそうになったら素直に打ち明ければいいし、ミレイ一人で無理なら協力する。だからミレイも自分の強さを信じてほしい」
そしてこんな事を言われてしまったからには、予言に負ける訳にはいか
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