第8章:拓かれる可能性
第250話「止めて見せる」
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全力で振るわれる拳が、受け流される。
しかし、反撃は返ってこない。
代わりに、優輝の背後が爆ぜた。
「(あまりの威力に、反撃が出来ていない……!?)」
その様子を見ていた椿は、そう分析する。
椿の予想通り、緋雪の一撃の威力が、反撃の隙を与えていないのだ。
いくら導王流の極致とはいえ、限界がある。
その限界を、緋雪は超えているのだ。
「ぁああああああっ!!」
声を上げながら、緋雪は拳や手刀を繰り出す。
その度に受け流され、衝撃が後ろで爆ぜる。
「(……でも、それ以上は踏み込めないのね)」
転移にも食らいつき、反撃の隙を与えずに攻撃し続ける緋雪。
しかし、攻撃自体は通用していない。
分身による援護射撃も全て受け流し、相殺されている。
それ以上は、緋雪も踏み込めていないのだ。
「(厳密には、優輝はあの攻撃にすら反撃出来る。それをしないのは、直後の隙を確実に突かれると分かっているから。洗脳されているにも関わらず、随分と安定した選択を取るのね……)」
椿の分析を余所に、緋雪の戦闘は続く。
振るわれた拳を受け流され、追撃は紙一重で躱される。
「(分身で遠距離攻撃を阻止して、インファイトに持ち込む……!これで、少しでもダメージを蓄積させる……!)」
遠距離攻撃は分身による援護で全て相殺する。
それによって、完全にインファイトのみで戦闘を成立させる。
「っ……!」
受け流し続ける優輝だが、その顔に余裕はなかった。
何せ、少しでも受け流しに失敗すれば、直撃でなくとも大ダメージだからだ。
現に、紙一重で避けても余波だけで体勢が崩れかけていた。
「ふっ!」
「ッ!」
しかし、“対応”してくる。
この僅かな短時間で、優輝は緋雪の動きに少し慣れた。
受け流しの際の多少のダメージを無視し、カウンターを繰り出してきた。
「はぁっ!」
「ッ!」
「くっ……!」
カウンターをさらに防ぎ、緋雪は対応する。
転移も併用するため、こちらも油断すれば直撃を喰らう。
どちらも極限まで精神を研ぎ澄ませ、攻防を繰り広げていた。
「シッ!」
「はっ!」
「……!」
転移先に手刀を薙ぎ払う。
それを受け流され、カウンターの蹴りが放たれる。
半身をずらす事で避け、空いた片手の爪で斬り上げを放つ。
しかし、その前に手首に掌底を当てられ、阻止される。
「(捕まらない、か!)」
防いだ時や、攻撃を阻止した際に、何度も優輝を掴もうとする。
だが、良くても掴みかけるまでで、転移で逃げられる。
転移魔法がある限り、完全に捕獲する事は出来なかった。
「っ……!」
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