第8章:拓かれる可能性
第250話「止めて見せる」
[1/10]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「か、ふっ……!?」
手刀で胸を貫かれる。
それを認識した時には、椿は敗北を悟っていた。
奏と葵は既に吹き飛ばされ、戻ってくるのに僅かでも時間が掛かる。
否、二人もダメージが蓄積している事から、立ち上がるのもきついだろう。
「ぐ、っ……!」
司が魔法で優輝を椿から引き剥がすが、同時に反撃を繰り出される。
転移と共に繰り出されたその攻撃は、何とか障壁で防ぐ。
だが、間髪入れずに放たれた一撃は、その障壁を徹して司に直撃する。
「穿て」
「ぁ……」
僅かにでも怯めば、そこで終わりだ。
障壁の維持が緩んだ瞬間に、砲撃魔法が司を呑み込んだ。
「(完全に瓦解した……!)」
まだ戦えはする。
だが、一度全滅してしまえば立て直すのは不可能だ。
ましてや、相手が優輝であるならば。
「(まずい……!)」
僅かにでも抵抗する動きを見せれば、そこから優輝は叩き潰してくるだろう。
だからこそ、下手に動く訳にはいかなかった。
……尤も、その動く事すら困難な程ダメージを負っているのだが。
―――だからこそ、一瞬信じる事が出来なかった。
―――飛んできた緋い軌跡が、優輝を飛び退かせたのを。
「(優輝が……受け流さずに避けた?)」
途轍もない速さで何かが駆けて、それを避けるように優輝が飛び退いた。
椿には、そうとしか見えなかった。
そして、それを行った者を見て、目を見開く。
「緋雪……?」
「………」
椿の呟きが聞こえていないのか、緋雪は無言で優輝を見つめる。
その手には、シャルとリヒトがあった。
「(姿が……いえ、羽が変わった……?それに、あの顔つきは……)」
羽が変化し、ぶら下がっていた宝石が緋雪を守るように漂う。
そして、緋雪の顔つきもどこか頼もしく見えた。
「……奇しくも、あの時と逆だね。お兄ちゃん」
「………」
「絶対に、止めて見せる」
力強いその呟きと共に、戦いが始まった。
最初に仕掛けたのは緋雪だ。
シャルとリヒトを同時に振るい、クロスに切り裂こうとする。
「ふっ……!」
だが、いくら強く、速く武器を振るおうと、導王流には無意味だ。
その攻撃はあっさりと受け流され、反撃の掌底が迫る。
「ッ!!」
……それを、緋雪も当然ながら想定していた。
いつもは羽にぶら下がっていた宝石のようなものが、優輝の攻撃を阻む。
今や、その宝石……魔晶石はただ魔法を込めるだけでなく、武器としても使える。
「くっ
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ