§40 兄妹喧嘩(偽)
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
のようですね」
教主は諦めたようにそう呟く。
「ならば」
轟!! 予備動作皆無での大気の奔流。雷龍を粉砕せんと振るわれる恐怖の力。螺旋の渦が周囲を包み、全方位から襲いかかる。
「させないって。――我は大罪背負いし悪神。焔で全て断絶させよう。定義"空間"。疾く、絶て」
根源分かつ無情なる焔が、黎斗の掌から迸る。焔の線は魔風と力士の間の空間をこちらとあちらに"分離"させる。直後、空間の断層に衝突する風。絶対の壁にぶち当たり、行き場を無くした風のうねりが周囲を根こそぎ破壊する。
「隙有り!!」
爆風が砂塵を立ち上らせて、視界を根こそぎ奪い去る。そして、その隙をついて死角からの無音の一撃。限りなく希薄な気配を辿り、黎斗の位置を探り当てるなど果たして幾人出来るだろう?
「うん、詰めが甘いかな」
彼女の耳に入ったのは、そんな黎斗の勝利宣言。
「馬鹿な……!?」
剛力で死角から急所への一撃は、たしかに会心のものになっただろう。――相手に気配を気取られなければ。
「気付かないとでも思ったかーふはははー」
黎斗の気配察知能力は教主にかなわない。だが、一線級のものであることに変わりはないのだ。教主が闘志を隠していればまた別だったかもしれないが、これだけ近距離で殺気を放っていれば、黎斗が気付かぬ訳がない。
「そう。つまるところ自滅、かな」
あとは流転する輪廻と破滅の呪鎖の必殺コンボで、終幕だ。未来より現在に向かって展開される破滅の鎖の回避は何人たりとも出来はしない。
「僕の、勝ちだね」
壊死して変色した右腕をぶらつかせる少年が呟く。彼の首まであと一歩。紙一重の所で少女は鎖に巻き取られ。言霊で風を操ろうにも、この距離では一切合財邪眼に抹消されてしまう。ここまで、だ。見苦しくあがくのも悪くはないだろう。だが。
「……完敗です」
そう言って倒れ込む。大地に寝転ぶ少女の頬をなでる風は、心地よかった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ