第8章:拓かれる可能性
第249話「緋き雪の姫」
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も、きっとまだ足掻いている。司さんも、椿さんも、葵さんも、奏ちゃんも、まだ戦っている。だから、私も戻らないと」
その掌に収まるように、魔力が圧縮される。
やがて、その魔力が一つの形を為す。即ち、赤き炎の如き大剣へと。
「そのために、私はこの過去を乗り越える!」
大剣を両手で持ち、上段に構える。
際限なく魔力を込められた大剣は、天にすら届くように伸びている。
「切り裂け、焔閃!!」
―――“L?vateinn”
そして、その大剣を一気に振り下ろした。
刹那、世界が割れていき、同時に淡い光に包まれた。
「………ッ!」
「緋雪ちゃん!?」
気づけば、元の現実に戻っていた。
見れば、シャマルが心配そうにこちらを見ていた。
どうやら、動かなくなった緋雪を心配していたようだ。
「……シャル。どれくらい時間が経った?」
〈時間にして26秒です。大して経っていません〉
「そっか。それは重畳」
あれ程自身を苦しめていた吸血衝動が、綺麗さっぱりなくなっていた。
狂気に基づく副産物とはいえ、すぐに衝動が消える訳ではない。
だが、今の緋雪にとっては、“またジュースが飲みたい”程度の衝動でしかない。
故に、いとも簡単に衝動を抑える事が出来た。
「緋雪ちゃん……大丈夫なの?」
「大丈夫です。……もう、平気です」
「でも、羽が……」
言われて、緋雪も気づく。
宝石のようなものがぶら下がった羽が、変わっていた。
羽は蝙蝠のように真っ黒な膜が付き、より羽らしくなっていた。
ぶら下がっていた宝石は外れ、緋雪を守るように浮かんでいる。
「……そんな事よりも、私もお兄ちゃんの所に行かなくちゃ」
「………!」
強い意志を感じるその言葉に、シャマルは言葉を詰まらせる。
だが、同時にもう大丈夫なのだと確信出来た。
「リヒト、手伝ってくれる?」
〈私で良ければ、是非〉
シャルを手に取り、続けてリヒトも地面から引き抜く。
相手は優輝だ。マスターを助けるためにも、リヒトは緋雪に従った。
「―――行くよ!!」
緋き雪の姫が、戦場へと舞い戻る。
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