第8章:拓かれる可能性
第249話「緋き雪の姫」
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いて、緋雪はさらに身が竦んでしまう。
どうしても、目の前のバケモノに勝てる気がしなかった。
「どう、して……っ!?」
目の前のバケモノが強いから、恐ろしい見た目をしているから。
そんな理由で、緋雪は今更怯える事はないはずだ。
神界の神と戦った後では、どんな戦いも怯える要素にはならないはず。
だというのに、緋雪は恐怖で動けなかった。
「(………そっか。ずっと、恐かったんだ……私……)」
その時、ようやく悟った。
なぜ、ここまで恐怖で動けなくなるのか。
なぜ、“狂気”と言う感情を持っていたのか。
過去を改めて見て、目の前のバケモノを見て、ようやく気付けた。
「(生物兵器としての力を持った事。それに対する周囲の視線。私に親切にしてくれた人の裏切り。ずっと支えてくれた人の喪失。……全部が恐かったんだ)」
生物兵器としての力を受け入れて振るっていたつもりだった。
だが、本当はずっと恐いままだったのだ。
いつか、その力が大切な人を傷つけてしまうのだと、そう考えて。
「ただ怖くて、恐くて、コワくて……その恐怖心が、狂気に繋がった。ずっと怯えていたから、狂うしかなかったんだ」
その身に余る恐怖によって、無意識に狂気に陥った。
狂ってしまえば、その恐怖や苦しみから逃れられるだろうと考えたからだ。
「だから、“破壊の瞳”でも壊しきれなかった。だって、私が壊そうとしていたのは、飽くまで“狂気”。原因となる恐怖心は、ずっと残ってたんだから」
ずっと恐怖心を狂気だと思っていた。
そのため、緋雪はずっと気づけなかった。
だが、目の前の恐怖心の象徴たる“バケモノ”を見て、自分の本心に気付けた。
「誰かを傷つける事が、誰かに傷つけられる事が、ずっと恐かった。守ってくれる人を失う事も、傷つけてしまう事も、恐かった。……ずっと積み重ね続けていたモノに、ずっと蓋をし続けていた。……ずっと、見ないようにしてた」
バケモノが、緋雪に向かって爪を振り下ろす。
それを、緋雪は黙って見ていた。
「―――でも、それももう終わりだよ」
……なぜなら、その爪でもう自分を傷つける事はないと分かっていたから。
体でその爪を受け止めた緋雪は、“破壊の瞳”をバケモノに向ける。
「私は、その恐怖を今こそ乗り越えるんだから―――!」
―――“破綻せよ、理よ”
その瞬間、バケモノの体が爆ぜた。
中から現れたのは、幽霊のように体が透け、淡く光るシュネーだ。
シャルを使った時の黒いドレスではなく、町娘が着るような普通の服を着ている。
在りし日の
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