第8章:拓かれる可能性
第249話「緋き雪の姫」
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に親切にしていた。
「(……でも)」
それでも、離れていく。
幾度となく、生物兵器の力を抑えられずに暴走した。
その度に、親しくしてくれた人が離れていった。
「(その結果が、これだ)」
緋雪の目の前では、丁度シュネーを庇ってムートが殺されていた。
最後までシュネーの身を案じてくれたのは、ほんのごく僅かだ。
他は反乱を起こすまでにシュネーを恐れ……結果としてムートが死んだ。
『あ、は……あはは……あははははははははははははははははははははは!!!』
そして、シュネーは完全に哀しみに狂ってしまった。
後は、語るまでもない。
狂ったシュネーは、人を殺し、街を殺し、国を殺した。
虐殺の限りを尽くし……最期は、オリヴィエとクラウスに打倒された。
「……かつての私の焼き増し……」
今緋雪が見たモノは、飽くまで過去に起きた事だ。
だが、確かに緋雪が経験したもので、出来事が早送りのように流れても、心に刻むように緋雪の記憶にこびりつく。
「(―――怖い、か)」
幸せな日々から一転、ただただ恐れられる日々が続いた。
周りからの視線に怯え、ただ助けられるだけの日々に苦しんだ。
「ッ………!?」
その時、目の前に緋雪そっくりの少女が現れる。
「(私……!?それとも、シュネー……!?)」
どちらかは分からない。
しかし、そんな疑問はすぐにどうでもよくなった。
「ぇ……あ………」
目の前の少女の姿が変わっていく。
変身魔法の類ではない。むしろ、これは“変異”だ。
爪は鋭く、長いものに、牙も伸びて“噛む”と言うよりは“裂く”牙に。
口は裂け、体格も大きくなる。黒髪はさらに伸び、まるで蛇のようにうねる。
見た目はまさしく醜悪な“バケモノ”だ。
「ッッ……!」
咄嗟に緋雪は飛び退き、ソレから距離を取る。
そこでふと気づいた。
……体が、未だかつてない程震えていた事に。
「(……恐い……?)」
より正確に言うのなら、かつてムートに守られて怯えていた頃と同じように。
緋雪は、目の前の化け物に対して怯えていた。
「なんで、今更……」
心が震える。体が震える。
決して抑える事の出来ない恐怖が、緋雪を苛む。
「シャ……っ」
シャルを呼び寄せようとして、今この場にいないのを思い出す。
ここは精神世界だ。目の前のバケモノも、緋雪の精神から作られたモノだ。
だからこそ、緋雪の心で何とかしないといけない。
「ァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ぐっ……!?」
金切り声のような咆哮が緋雪の耳を突く。
それを聞
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