第8章:拓かれる可能性
第249話「緋き雪の姫」
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れない。世界を知らなかったかもしれない。
それでも、ムートと共に遊んでいたあの日々は、確かに幸せだったのだ。
「(―――だけど)」
それは、唐突に終わる。
ムートが王子である事を知っても、仲が良かったのは変わらなかった。
ムートが王に就任し、交流が激減したとしても、平和には変わらなかった。
……しかし、突如シュネーが拉致された事で仮初の平和は終わった。
『いやっ、いやぁっ!助けて……助けてムート!!』
「っ………」
連れ去られた先は、どことも知れない研究所。
あの時、拉致されたのはシュネーだけでなく、他にも同年代の子供がいた。
一人、また一人と人体実験で壊れ、狂い、死んでいった。
それを、逃げられない場所でシュネーはずっと怯えていた。
「(助けを求めても、来るはずがなかった。……だって、こいつらは国に隠れて生物兵器を作ろうとしていた連中。見つからないように、入念に準備していたんだから)」
助けを呼んでも、誰も来ない。
その事実に絶望して、それでも死にたくないと足掻いた。
……その結果が。
『―――あははははははははははははははははははははははははははは!!!』
狂気に満たされ、破壊の限りを尽くす目の前の光景だ。
『ッ……!?シュネー……!?』
「……ムート」
研究所の人間を皆殺しにし、笑っていたシュネーの元へムートが駆けつける。
それを、緋雪はどこか達観した目で見ていた。
その後、シュネーはムートによって無力化され、城へと連れていかれた。
「ッ………」
助けられた当初は、それこそ同情されていた。
城の者だけでなく、シュネーの事を知った人は皆同情していた。
『来ないで……来ないで!この、バケモノ!』
『お前はシュネーじゃない!』
『ぇ………』
だが、それは最初だけだった。
一度目の暴走が止められた時、実の親に拒絶された。
暴走の発端など、些細なものだったはずだ。
それこそ、暴漢に襲われそうになった親を助けるために、力を振るっただけだった。
……だというのに、その力は恐れられた。
『…………』
実の親に化物を見る目で見られ、シュネーは城に宛がわれた部屋に引きこもった。
無理もない。いくらベルカ戦乱の時代に生まれても、シュネーはそこらで生まれた普通の少女に過ぎなかった。
「……ムート、オリヴィエ、クラウス……」
そんなシュネーに寄り添ったのが、ムート達だった。
敵対国でないとはいえ、他国の王族が共にいるなど不用心なはずだ。
それでも、三人はシュネーのために無理を通して傍にいてあげた。
三人だけではない。
ムートを慕う城の者も、シュネー
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