第8章:拓かれる可能性
第249話「緋き雪の姫」
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いた吸血衝動も今はない。
そう簡単になくなる訳がないからこそ、ここが現実ではないと確信したのだ。
「(リヒトの言う通りなら、ここのどこかに“答え”があるはず……)」
ここに来る直前にリヒトに言われた事を思い出しつつ、緋雪は足を進める。
「(心象世界……いつもは結界として展開していたけど、精神世界の場合は……一体、どこまで続いているの?)」
いつもは哀しみの狂気を表す光景しか映し出さない心象風景。
しかし、今回の場合は狂気の根源を見つける必要がある。
「………」
とにかく、移動を開始する。
何もせずにいればそれこそ何も変わらない。
精神世界でも同様に飛べるため、まずは空に上がった。
「あれって……」
本来であれば、緋雪の心象風景は紅い水面と暗雲、そしてその世界を照らす朱い月があるだけの世界が続いているはずだった。
だが、いざ飛び上がって見れば、一つの山を越えた先に別のモノがあった。
それは、緋雪にとって見覚えがある景色だった。
「……そっか、そうだよね。シュネーだった時から続く心象だもん。あの国が残っていても、何もおかしくはないよね」
それは、かつてシュネーだった時にいた国。
即ち、導王だったムートの治めていた国に他ならなかった。
「ッ………」
知らず知らずの内に、緋雪はその国へ向かっていた。
きっと、そこに“答え”があるのだろうと、そう感じて。
『シュネー、登ってこれるかい?』
『無理だよー!ムートみたいに登れないよ!』
懐かしい景色があった。
国に辿り着いた時、目に入ったのはかつての活気そのままの街並みだった。
戦時中であろうと、街の中枢はいつも通りだ。
全て、緋雪の思い出の中そのままの光景だった。
……そう。今緋雪の目の前で、木登りしているムートとシュネーも、かつての思い出の光景そのままだ。
「(……この時の私は、まだムートが王子だって知らなかったんだよね)」
当時、ムートはよく城を抜け出して街に遊びに出ていた。
さすがに護衛などがいたかもしれないが、まさに普通の子供そのものだった。
そんなムートと、かつての緋雪……シュネーはいつも遊んでいたのだ。
「(今思えば、城の人達に身元とか調べられていたのかな?)」
自国の街とはいえ、危険がない訳ではない。
相手が子供だろうと、不用意に仲を深めるのは危険だろう。
実際、シュネーは知らなかったが護衛がシュネーの家系を調べていた。
結果的に無害と判断され、こうして幼馴染としてムートと仲を深めていた。
「……懐かしい、なぁ……」
あの時は何もかもが幸せだった。
子供だったからかもし
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