第8章:拓かれる可能性
第249話「緋き雪の姫」
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らないと言うべきだろう。
限界の壁を認識した今でも、吸血衝動の根源が分からずにいたのだ。
「皆が、戦ってる、のに……!」
障壁の外を見れば、優輝を相手に劣勢になっている司達が見えた。
緋雪にとって、現状がどうなっているのか知らない。
それでも、皆が必死に戦っている事ぐらいは理解出来た。
〈……緋雪様?〉
「ぁ……リヒト……?どうして、ここに……」
ふと見れば、そこには剣のままのリヒトが地面に刺さっていた。
優奈が一度ここに来た時にでも、置いて行ったのだろう。
現に、イリスと戦っている優奈はリヒトを使わずに戦っていた。
「ぁ、ぐっ……!?」
〈これは……吸血衝動、ですか?〉
リヒトにとって、それは何度も見た事がある衝動だ。
だからこそ、解析魔法などを発動せずとも分かった。
〈……まさか、その状態で戦いに行くつもりですか!?〉
「そう、だよ……!皆も戦っているのに……私だけ何もしない訳には、いかない……!吸血衝動とか、そんなの気にしていられない……!」
嘘だ。明らかに無視できない状態が続いている。
そんな状態で戦いに行っても足手纏いになるのは明らかだ。
〈ッ……シャルラッハロート!貴女もなぜ止めないのです!?例え緋雪様が望んでいようと、止めなければ望まない結果にしかなりませんよ!?〉
〈……止めても無駄ですから〉
シャルの返答に、リヒトは言葉を詰まらせる。
ああ、確かに今の緋雪を言葉だけで止められる訳がないだろう。
それはリヒトにも分かっていた。
だが、それだけの理由で止める事すらしないと?
その事実に、リヒトはデバイスでありながら憤慨しそうになった。
〈故に、貴女の所に来るまで何も言わなかったのです〉
〈……何ですって?〉
しかし、続けられた言葉に思わずリヒトは聞き返した。
「シャル……?」
〈私が、本当にお嬢様の望むがままにさせているだけと思いですか?……私が、何のためにマイスターによってお嬢様に授けられたと思いですか?〉
いつも傍にいた。いつも手助けをしていた。
暴走しても、狂気に囚われても、いつもシュネーに、そして緋雪についてきた。
〈ただ、守る手段としてではありません。……マイスターにすら知る事の出来ない……いえ、お嬢様すら自覚出来ない本心を知るためです!〉
つまりそれは、最も身近にいる“第三者の目”だ。
緋雪が優輝にすら見せなかった心を知る事が出来る、唯一の存在。
そして、緋雪自身も終ぞ気づけなかった“本心”に気付く事が出来る唯一の存在が、シャルなのだ。
〈吸血衝動は、飽くまで便宜上そう呼んでいるだけであ
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