第8章:拓かれる可能性
第249話「緋き雪の姫」
[1/9]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「緋雪……ちゃん……?」
皆が必死になって戦っている中、シャマルは困惑していた。
傷はきっちり治したはずなのだ。それなのに……
「……ぁ……ぐ……ぅっ……!!」
目を覚ました緋雪は、ずっと苦しんでいる。
どう見ても戦えるような状況じゃなかった。
「っ……血………」
「え……?」
「血、が……足りない……」
呟かれた言葉に、一瞬シャマルは単純に体の血が足りていないのかと思った。
だが、直後に違うと気付く。何せ、緋雪は吸血鬼と同じような体なのだ。
すぐに“吸血衝動”だと理解した。
「ッ……!」
そんなシャマルを余所に、緋雪はシャルに格納していた輸血パックを取り出す。
そして、躊躇なくその中身を呑み込んだ。
「ぁ、が……!?ぁあああああっ……!?」
だが、逆効果だった。
血に対する餓えがさらに増してしまった。
今の緋雪にとって、血は麻薬と同じだ。摂れば摂る程に欲してしまう。
「緋雪ちゃん!」
「シャマル、さん……?」
そこで、ようやくシャマルが視界に入る。
心配して顔を覗き込んでくるシャマルを、緋雪も苦しさに耐えつつ見返す。
「(シャマルさん……苦しいよ………ッ!?)」
直後、自身に過った思考を振り払おうとする。
だけど、収まらない。既に許容限界を超えた血を摂取してしまった。
誰かを視界に入れる度に吸血衝動が強くなっていく。
「ぇ……?」
「ッ―――!?」
少し油断すれば、これだ。
無意識に、シャマルの首筋に牙を突き立てようとしていた。
思わず、それ以上やらかさないように、シャマルを突き飛ばす。
「けほっ……緋雪ちゃん……?」
思った以上に強く突き飛ばしたのか、シャマルは咳き込む。
そして、困惑した表情で緋雪を見つめていた。
「離、れて……!」
「もしかして、吸血衝動が……」
シャマルの言葉に、緋雪は力なく頷く。
目は霞み、意識も朦朧としている。
それでも、傷つけないために必死に堪えていた。
「(吸血衝動そのものを……“破壊”する……!)」
―――“破綻せよ、理よ”
“破壊の瞳”で、何とか吸血衝動を“破壊”する。
根本の解決とまではいかなくても、これで現状維持は出来るはずだ。
「ふーっ、ふーっ、ふーっ……!」
「だ、大丈夫……?」
「今は……何とか……でも……ッ!」
消しても、また溢れるように吸血衝動は襲ってくる。
“破壊”した所で無意味なのだ。
否、厳密には完全克服するための破壊対象が分か
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ