二つの黒
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
足らねえってか?」
「でもあの人、完全にこっち向いてるよ」
ウィザードが示した通り、キャスターはこちらへ注意をそらした。
「あれ? オレ別にこっちむいて欲しくてやったわけじゃねえんだが……」
だが、そんなビーストのぼやきとは真逆に、彼女はこちらへ集中砲火を浴びせてくる。
高度を下げて回避したウィザードだが、キャスターに近いビーストは遅れた。
「ぬわあああああああああああ?」
「何やってんだよ!」
『エクステンド プリーズ』
ウィザードが発動した魔法陣に、手を突っ込む。伸縮自在の腕がビーストを地面に引き落とし、キャスターの光線を避けさせる。
「ぬわっ!」
何やら文句を言い出すビーストを下に見ながら、ウィザードは指輪を取り換える。だが、ハンドオーサーを操作する直前に、背中に圧が加わった。
「なっ?」
哀れ指輪は光の雨の中へ落ちていく。ウィザードを踏んづけた黒い影ことアサシンは、そのままキャスターへ肉薄。
「葬る!」
アサシンの刃と、キャスターの黒い防壁がぶつかる。黒い稲妻が走り、キャスターの体が落下した。
「……」
肩に付いた埃を払い、キャスターはスタリと着地したアサシンを見返す。
「アサシンのサーヴァント……」
「お前はキャスターのサーヴァントだな……」
黒い衣服と、赤い眼。外見の共通点がありながら、全く手を取り合うことのなさそうな二人は、じっと見つめ合っていた。
「待って!」
「お前は……」
「ランサー……」
二人の戦いを止めようとする、三人目のサーヴァント、ランサー。響は、二人の間に割り入る。
「どうして戦う必要があるの? 私たちは、手を取り合って生きる選択肢だってあるはずだよ! 聖杯だからとかサーヴァントだからとかなんてどうでもいいでしょ?」
「それはお前だけだ」
響の言葉に、アサシンは冷たく吐き捨てる。
「心残りがないのなら、この聖杯戦争から消えろ。私の生き永らえるという願いを消すな」
「生き永らえる……?」
アサシンの言葉に、ウィザードもビーストとともに耳を傾けた。
彼女は続ける。
「私は死んだ仲間たちと違って生き延びてしまった。だから、皆とは違って生き残る」
アサシンの強い目線に、ウィザードは少し後ずさりをした。同時に、キャスターもまた口を開く。
「ランサー。貴女が願いを持たないというのなら、止めはしない。だが、私は願ってしまった。死の直前、もう一度主にお会いしたいと」
顔に刻まれた、赤い幾何学模様。それをなぞる様に、彼女の目から、涙が伝う。
「我が主のために。我が分身たちのために。ここで、消え果なさい!」
キャスターが掌を響たちへ向ける
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ