忘れられた惑星ドイナカン
[1/2]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
収容所惑星ラーゲリからの脱獄に成功したハンソンは、同じシベリア星系にある惑星ドイナカンに潜伏していた。この星は元々農業が主要産業の辺境惑星であったが、領主であるムノー男爵家の長年にわたる苛烈な搾取と、帝国暦481年/宇宙歴790年から始まる大飢饉の影響で人口が激減、今や人口が1万人にも満たない過疎惑星となっており、別名「忘れられた惑星」と呼ばれていた。
ハンソンは惑星ドイナカンで最も過疎地域であるマサラ村の若い教師、マオ・ツォートンの庇護を受けてながら、雌伏の時を過ごしていた。
・
・
・
村はずれのあばら家近くの畑で、ハンソンは今日も農作業に勤しんでいた。
「ハンソン先生ー!」
「ん?おぉマオ君か、今日はもう仕事は終わったのかい?」
「はい!先生もお疲れ様です。私も手伝いますね!」
「いや、今日はもう日が暮れるし終わりにしよう。」
「それでは夕食にしましょう。今日はなんとこれを手に入れましたよ!」
マオはそう言うと、透明な液体の入った瓶を取り出した。
「これは……おぉ!ウォッカじゃないか!よく手に入れたな!」
「たまたま贔屓にしてる商店で売ってましてね……かなり高かったんですが、奮発して買っちゃいましたよ!」
「それじゃあ早速飲むとしようか!」
ハンソンとマオは軽やかな足取りであばら家に入っていった。
・
・
・
「いや〜久しぶりのウォッカはやっぱ良い物だな。ここに来てからは醸造アルコールがごちそうだったからな……」
ハンソンはそう言いながら黒パンを噛み千切り、キャベツのシチーを飲み干した。
「ドイナカンの食糧事情は私が見てきた中でもかなり酷いものがある。人民が口に出来るのは、このカチカチに固まった黒パンと、塩の味すらしないキャベツのシチーのだけだ。」
「領主は配給があるだけこの土地の領民は幸福だと言ってますけどね。」
「これのいったいどこが幸福だというのだ?農民たちは自分達の作る農作物を年貢として収奪されていき、町の労働者たちは真面な仕事に在りつけず僅かばかりの配給で喰い凌いでいる……だいだい支払われる給料が帝国マルクではなく、男爵家公認の商品券とはいったい何様のつもりだ!」
「帝国マルクではなく商品券にすることによって男爵家と繋がりの有る商店ですか物を買わせないようにしてるんですよ。連中のやりそうなことです。」
「分かってはいたが、改めて聞くとほんと酷い搾取の構造だな……だが一番驚いたことはこの惑星の人民が、それに対して抵抗どころか意志すら示していないことだ。」
「それは……」
「分かってるよマオ君。私はこの惑星の人民の無知を悪であり罪だとは思っていない。本当に邪悪なのは人民の無知に付け込んで搾取に利用する男爵家
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ