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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第49話 オルタンス邸
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れなおしてくれる。会話が途切れたタイミングを見計らってきてくれるとしたら、流石としか言いようがない。頭が勝手に糖分を渇望しているのか、オルタンスさんが部屋から見えなくなってから、俺の手はコーヒーシュガーへと伸びていく。

「あんまり砂糖を入れすぎると、肥満の原因になるぞ」
 最初から腹の中同様、ブラックを飲み続けるキャゼルヌは、溜息をつきながら俺に言った。
「結婚するなりして、生活面を管理された方がいいかもしれんな。仕事熱心なのは知っているが、どうにも仕事関係以外の面には疎いように見える」
「来月でしたっけ、先輩の結婚式」
「話を逸らすな。真面目に聞け」

 余計なおせっかいだと言っているキャゼルヌですら分かってはいるのだろうが、言う口ぶりも、顔つきも真剣だ。俺自身、自分の隙の多さについては指摘されるまでもなく理解している……つもりだ。

「お前さんにはどうにも自身の価値というモノを理解したうえで、敢えて目を逸らそうとする節があるな」
「高級軍人の息子で、士官学校首席卒業者ということですか?」
「お前。俺のことをバカにしてるのか?」

 明らかにキャゼルヌの口調に危険なものが加わったので、俺は混ぜっ返すことはなく眉を寄せたキャゼルヌの顔を正面から見つめる。それでキャゼルヌは理解してくれたようで、新しいコーヒーに口を付ける。

「……そのつもりは毛頭ありませんよ」
「喧嘩を売る相手は気を付けて選べよ。保身に対する無関心さはトリューニヒトの例を挙げるまでもなく外部にいらぬ迷惑をもたらすことになる」
「まぁ、なるべき気を付けるようにします」
「その口調はヤンそっくりだな……いやヤンがお前に似ているのか」
 
 そう言うとキャゼルヌは顔に手を当て、大きく溜息をつくのだった。

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