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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第49話 オルタンス邸
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て。散々な目に遭いましたよ」

 オルタンスさんに軽く敬礼すると、俺はテーブルの上に並べられ芳香を漂わせる料理へと視線を向ける。鶏肉とベーコンのワイン煮込みがメインで、ライスサラダにキャロットラぺ。そしてクッペが二つずつ。ボロディン家は両親の血統からロシア系とポリネシア系の料理が主体だが、オルタンスさんはフランス系のオーソドックスな洋食が得意なのかもしれない。

「ボロディン家のお料理に比べれば、まだまだかもしれませんけど」
「とんでもない。この不肖の後輩に、これほどの手料理をふるまっていただけるなんて、正直感動しております」
「そうだぞ、オルタンス。コイツはフェザーンで美女と美食に溺れて失敗して、辺境に流されたクチd……ッツ」
「まぁ! これ『クール・ド・レオパルド』じゃありませんこと。あなた、ちゃんとボロディンさんにお礼したんですの?」
「……気が利くな、不肖の後輩」
「いえいえ」

 鼻で笑おうとしたキャゼルヌの背中を、カルヴァドスを抱えたオルタンスさんが小さく抓ったのを、俺は見逃さなかった。オルタンスさんが俺に気を使ってくれたこと、そして言いたいことが分かるだけに、キャゼルヌも不承不承俺に礼を言った。やはり精神性では五歳年上のキャゼルヌも二歳年上の俺も、オルタンスさんに頭が上がらない。

そしてオルタンスさん特製のコックオーヴァンは、しっかりとした煮込み具合と、とろみ付けが絶品だった。恐らく来週あたりヤンとアッテンボローがここに来て食べる雉肉のシチューの美味さが明確に予感できて、たぶんキャゼルヌがいろいろ配慮してその場にいないことが分かるだけに、残念でならなかった。

 食後、ダイニングからリビングに移動し、俺とキャゼルヌにコーヒーが供され、オルタンスさんはキッチンへと引き返していった。皿を流れる水の音を確認してから、キャゼルヌは俺の方へと視線を移した。

「さっきは悪かったな」
「事実ですから仕方ありません」
 俺が苦笑して肩を竦めると、キャゼルヌは罰が悪そうに小さく頭を下げ、コーヒーを一口してから、真剣な表情で俺に向き合った。
「マーロヴィアでの活躍は後方勤務本部にいる同期から聞いている。エル・ファシルの英雄騒ぎで最近ではほとんど話題になっていないが、査閲部と法務部と憲兵隊の連中が色めき立っているらしい」
「法務部ですか。厄介ですね」
 法務部から今後襲い掛かってくるであろう注文内容に思いをはせていると、キャゼルヌは首をかしげて俺を見て言った。
「査閲部の方が厄介じゃないのか?」
「私の初任地は査閲部ですので、なんで色めき立っているかはだいたいわかります」
「なるほどな。ではお前さんの今後について国防委員会と宇宙艦隊司令部が喧嘩を始めたというのは知ってるか?」

 国防委員会ということはトリュ
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