大きな罪
過去
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いないことを。私の雰囲気を感じたのか、彼は黙った。
「その少女には、もう聞けないんだ。」
消え入るような声で、そう告げた。
「ごめん。」
「気にしないで。」
私は気を取り直して、依頼のことを話した。
「と言うことなんだよね。」
「今回も大変な依頼だね。」
「そうなんだよね。」
「僕も協力して、その人物を探すよ。」
「ありがとう。」
私は宏から、過去のことを聞いた。小学校以前のことは、覚えていないようだ。
「玲はどうなの。」
「実は、私も覚えてないの。」
宏も私も覚えてないとなると、残りは私達の親ということになる。
「母さん達にも、聞いてみないとだね。」
「そうだな。」
「でも、まず先に聞かないといけない人がいる。」
「この少女の親だね。」
私は頷いた。
「行こう。」
「そうだね。」
二人は立ち上がり、もう一人の少女の家に向かった。彼等が向かうのは、橋本里奈がいた家だ。ここからだと、約二十分ほどかかるのだ。懐かしい道のりを進んで行き、よく遊びに来た家に着いた。私達は自転車を止めて、ドアの前に立った。
「着いたね。」
「そうだね。」
互いに見合わせ、そして小さく頷いた。そして、チャイムを鳴らした。
「こんにちは。」
中から返事が聞こえて、鍵を外す音がした。ドアが開かれると、母と歳が近い女性が顔を出した。
「お久しぶりです。」
「玲ちゃんね。そちらは、宏君かしら。大きくなったわね。」
「どうも。」
宏はぎこちなく返事をした。まあ、無理もない。宏はこの女性のことを、覚えていないのだから。
「さあ、上がって。」
そう言われて私達は、家の中に入った。客間に通された私達は、里奈の母と話していた。昔話を聞くことができた。
「あの。里奈の部屋を、見せてもらえませんか。」
「いいわよ。着いていらっしゃい。」
母親が立ち上がって、階段を上って行った。私と宏もその後に続いて行った。
「ここが、里奈の部屋よ。帰るときは声をかけて。」
「はい。ありがとうございます。」
母親が立ち去って、部屋の中には私達だけになった。
「始めよう。」
宏に声をかけて、作業を始めた。里奈の日記を探すためだ。生前、彼女は私に日記を書いていると、話していた。その中に、何か書いてあるかもしれない。そんなわずかな可能性に、私は賭けてみたかった。
「そっちはどう、玲。」
「見つからない。そっちは。」
「こっちもだ。」
探し始めてから十分ほど経った時、引き出しの奥からノートの束を見つけた。その中の一冊を手に取り、中を見た。
「これだ。」
それは、里奈の日記だった。他のノートも同じだった。彼女の生きた都市と同じくらいある日記。それは、紛れもなく里奈の生きた証だった。
「里奈。」
思わず、泣き
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