大きな罪
存在
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めていた。
「ねえ、玲。」
「どうしたの。」
「今から、出かけない。」
「え、今から。」
「そうだよ。」
「いいけど。」
驚きながらも、そう答えていた。
「じゃあ、行こう。」
宏はそう言って、私の手を引いた。
「ちょっと、着替えさせてよ。」
「平気だよ。」
私は流されるがままになっていた玄関に付き、靴を履いて外に出た。久しぶりに外に出た私は暑さに少したじろいだ。
「やっぱり、暑いな。」
「そうだね。」
だけど、全く外に出ていなかった私にとっては、気持ちが良かった。
「どこに行くの。」
「行けば、わかるよ。」
そうはぐらかして、宏は結局教えてくれない。
「まあ、いいけど。」
これ以上聞いても、彼は笑って答えてはくれないだろう。私はそんなことを考えながら、宏と並んで歩いた。手が触れそうで、触れない微妙な距離。手を伸ばせばとどくのに、伸ばせないでいた。
「宏。」
「ん。どうしたの。」
手をつないでもいいかな。と言いかけて口籠ってしまい、私は俯いた。言えない。恥ずかしくて言えるわけがない。
「やっぱり、なんでもない。」
「そっか。」
宏は不思議そうな顔をして、そのまま前を向いた。私の意気地なし。
俯いたままの玲。何を言おうとしたのだろうか。手をつなごう。なんて言える自信はなくて、僕はどうしたらいいのかと考えを巡らせていた。だけど結局名案と呼べるものは浮かばなかった。
「手をつなごう。玲。」
宏にそんなことを言われ、私は驚いて顔を上げた。
「だめかな。」
首をブンブンと横に振り、それを否定した。
「だめじゃない。」
「よかった。」
照れたように頭をかきながら、宏は笑っていた。
そっとつながれた宏の左手は、私のよりも大きくて温かかった。お互いに緊張しているせいか、しばらく二人の間に沈黙が流れた。その沈黙を破ったのは、宏の方だった。
「玲。着いたよ。」
そう言われて見ると、そこは映画館だった。
「行こう。」
玲は手を引かれ、二人は映画館の中に消えて行ったのだった。
楽しかった時間はあっという間に過ぎて、玲と宏はそれぞれの家に帰宅した。
「今日は楽しかったな。また、行けたら行きたいな。」
そんなことを呟いて、仕事机の前に私は座った。
「さてと、こっとも進めないと。じゃないと、また溜まる。」
そして私は、いつものように作業を始めたのだった。
次の日。既に夏季休業なので、学校には行かなかった。この日は、両親のいる家に帰っていた。宏には連絡を入れておいた。仕事場と家は、自転車で五分程の距離だ。
「ただいま。」
今日もまた、返事は無かった。仕方のないことだけど。私は自分の部屋に入った。いつものように、手紙などの束を持って。
「はあ。」
小さな溜
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