第1部
アッサラーム〜イシス
眠らない町
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ーラは苦い顔をしながら額に手を当てた。
「どういうこと? シーラ心当たりあるの?」
「うん。大体ビビのファンの人ってこうなっちゃうんだよねぇ。我が友ながら罪作りな奴よ」
確かに今日ビビアンさんに出会ってから、ナギの様子が変なのは、一目瞭然だった。ただ、彼女が好きなんだなってのはわかるけど、だからってこんな魂が抜けた状態にまでなるのだろうか?
「誰かを好きになるって、こういう感じだったっけ?」
「『好き』の形には、いろいろあるんだよミオちん」
いいながら、うんうんうなずくシーラ。うーん、私には理解できない。
「ほらナギ、こんなところで立ってないで、部屋に入りなよ」
私がぽんと背中を叩くと、ビクッと体を大きく震わせ、まるでいきなりルーラでここまで飛ばされたかのように辺りをキョロキョロと見回した。
「あれ? なんでオレこんなところにいるんだ?」
どうやらここまでどうやって来たのか記憶にないらしい。
「おかえり。ビビアンさんの踊りはどうだった?」
すると、ナギは興奮冷めやらぬ様子で私に顔を近づけると、大声でまくし立てた。
「どうだったもなにも、あれはまさに天使……いや女神様のようだったぜ!! あの流れるような動きといい、それでいて気品のある表情といい、全てにおいて普通の人間が出来る技じゃないのがわかるんだ!! まるで一枚の絵画を見ているようで……」
「ちょっ、待って……ストップ! わかったから!」
……余計なことを聞くんじゃなかった。まさかこんな流暢に感想を伝えてくるとは思わなかったので、私は両手を前に出してナギの暴走を必死で食い止める。
「明日は砂漠に行くんだから、早く休まないと! ユウリは先に部屋に入ってるよ」
「お前……! 急に現実に引き戻すようなことを言うなよな」
一瞬にして、ナギの表情が曇る。まるでこの世の終わりに直面したかのような様相だ。どれだけ現実から目をそらしていたんだろうか。
私は強引にナギの背中を押し、ユウリのいる部屋の扉を開けて無理やり押し込んだ。奥でなにやらユウリが喚いていたような気がするが、気にしないことにする。
ともあれ、明日はいよいよ砂漠に出発することになる。砂漠は初めて見るので何もかもが未知の領域だ。
町を歩いたときにユウリに聞いたのだが、砂漠は魔物も強く、気候も厳しいという。
私は気を引き締めて、明日に備えることにした。
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