第1部
アッサラーム〜イシス
眠らない町
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瞬間、ぎょっとした顔になるユウリ。やけに疲れた様子だけど、どうしたんだろう? それになんだか仄かにいい匂いがする。
「おかえり! 随分遅かったね。アルヴィスさんと何かあったの?」
私が何気なく聞くと、ユウリは襲いかかる魔物の形相でこちらを睨み返すと、
「うるさい!! お前には関係ないだろ!」
そう怒鳴り散らされた。彼に何があったのか気にはなるが、屋台での一件で生まれたモヤモヤした心に、さらに重い石を落とされた気分になり、これ以上は何も聞けなかった。
すると、シーラがにやりと笑みを浮かべながらユウリに尋ねた。
「ねえねえ、ユウリちゃん♪ アルヴィスんちで『ぱふぱふ』やったでしょ?」
「!? お前、なんで……!?」
明らかに動揺するユウリ。シーラはさらに言い立てる。
「だってあたし、アルヴィスのところで居候させてもらってたし〜☆ それにユウリちゃんから、懐かしい匂いがするもん♪」
「くっ……!」
そういうと、急に真顔になりユウリをじっと見据える。
「だからってそんなに機嫌悪くなることないじゃん、ミオちんがかわいそうだよ」
「……」
「んで、どう? 結構楽しかったでしょ?」
彼女が再び笑顔を見せると、ユウリはついに押し黙ってしまった。朗らかに笑うシーラを一瞥し、
「……黙れ! 俺はもう寝る!!」
そう吐き捨てると、部屋の扉を乱暴に閉めてしまった。私だけがよくわからないまま、取り残された感じになっている。
「ねえ、シーラ。『ぱふぱふ』って一体何なの? なんであんなにユウリは怒ってるの?」
「ん〜、あたしの口からは言えないかな〜。でも、普通の人はユウリちゃんみたいに機嫌悪くはなんないはずなんだけどね」
「??」
ますますわからない。そんなやたらと口に出すものじゃないなんて、どう考えても怪しすぎる。
「ミオちんも、むやみに色んな人に聞かない方がいいからね☆」
シーラに念を押され、結局ユウリがアルヴィスさんのところで何をしたかわからないままになった。
あとはナギだけだ。ナギの場合、きっとまだビビアンさんの踊りに夢中になっているのだろう。ひとまず部屋に戻ろうと、踵を返したとき、ここにあるはずのない壁にぶつかった。
「!?」
どういうことかと見上げると、それは壁ではなくナギだった。全く気配が感じられず、当の本人は間の抜けた顔でただぼーっとそこに突っ立っている。
「どっ、どうしたのナギ?! 全然気づかなかったよ!」
けれどナギは、明後日の方を向いたまま返事もせず、まるで脱け殻のようになっている。
「うあぁ、ナギちんやばいかも」
シ
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