収容所惑星ラーゲリ
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「判決!被告、カール・ハンソンを流罪とする!」
被告人席にいたハンソンは、裁判長が判決文を読み上げている姿を、まるで他人事のように見ていた……
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帝国暦485年/宇宙暦794年8月10日、ヴァルハラへ移送されたハンソン達は、オーディン特別法廷に出廷、裁判を受けた。しかしそれは裁判とは名ばかりのものであり、ただの形式的な儀式に過ぎなかった。
8月14日、裁判を経てハンソン以下元コミューン政府関係者250名の帝国市民権の剥奪と、惑星ラーゲリへの流罪が決定し収監された。
惑星ラーゲリは、銀河帝国最辺境のシベリア星系に存在する極寒の惑星である。惑星全土は永久凍土とタイガが覆われているが、銀河帝国最大の金鉱山【コルィマ鉱山】が存在しており、そこから採掘された金は、疲弊した帝国経済を支えていた。
鉱山開発には囚人が動員されており、彼等は過酷な環境の中、満足な防寒具・道具・食料を与えられずに、人間に耐えられる限界を超えて酷使され、死んでいった。いつしかラーゲリは史上最悪の収容所惑星と呼ばれるようになり、人々から恐れられた。
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「おらっ!こんなとこで力尽きてんじゃねえぞ! てめえら囚人どもは、ただ働いてりゃいいんだよ!!」
ムチを持った看守はそう吠え立てると、躊躇うことなく地面に蹲るハンソンの背を打ち据えた。押し殺した苦悶の声と、人の皮が裂ける生々しい音があたりに響き渡る。ハンソンは痛みに耐えながら看守をにらみつけた。
反抗的な態度に腹を立てた看守は、その背を踏みつけると、更なる懲罰を繰り返した。
繰り広げられる凄惨な仕打ち。だが、周囲にいる囚人の中に、それを止めようとする者はいなかった。それをすれば次に懲罰を与えられるのが己であることを、皆知っていたからである。
彼らはただ地面を見詰め、暴虐の嵐が通り過ぎるのを待つしかなかった……
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「だっ大丈夫か、お若いの。」
監督役の看守が嗜虐心を満足させて立ち去った後、背中の痛みに耐えながら立ち上がったハンソンに、1人の老人が声をかけてきた。
「大丈夫だ、問題ない。これくらいの事なら慣れている。」
ハンソンは背中をさすりながら余裕の表情で受け答えた。
「すまんの、見ず知らずのわしを庇ってくれたあんたを、惨い目にあわせてしもうて……」
「気にしなくていい。どうせあの男から目の敵にされているからな。どうってことないさ。」
ハンソンは何気ない風に返答するが、老人の顔から自責の念が消えることはなく、周囲からも心配そうな、申し訳なさそうな視線が注がれていた。
それを見てハンソンは改めて知った。
ここにいる皆が、決して人間らしい感情を失ったわけではないことを。
奴隷の如き扱いを受けても、他者を思
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