加速世界の中で
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「ゲホゲホっ!」
何が起きた?
岩礁を登って戻ったハルトは、蹴り終わった体勢のダークカブトを見て絶句する。
「今……俺、やられたのか……?」
ウィザードへの変身の解除と、全身の痛みが、自身の敗北を語っていた。
「ハルトさん!」
可奈美が、ハルトを助け起こす。
「今、あの人すごいカウンターだったよ」
「カウンター?」
「うん。ハルトさんの水の切っ先が届く寸前に、あのダークカブトがすごい加速したんだよ」
「加速?」
「うん。そのまま、ダークカブトの蹴りで、ハルトさんは解除までされたんだよ」
「そんな……」
ハルトはダークカブトを見返す。
彼は、ハルトにトドメを刺そうとしているのだろう、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
「さっきまでのも充分早かったのに、まだ更に加速能力まであるっての?」
「うん。しかも、普通の加速じゃない。普通の人じゃ絶対に追いきれないよ。今いるものとは、全く別の時間流の中での加速だった」
「そんな……そんな奴が処刑人……?」
「うん。でも、大丈夫!」
可奈美は、ハルトを庇うように、ダークカブトの前に立つ。
「私なら、あの動きに追いつける!」
「え?」
「迅位!」
可奈美が叫んだ瞬間、彼女の姿が白の光となって消える。
すると、海岸のあちらこちらで爆発が起きた。
岩塊がチーズのように裂かれ、水が幾重にも切り刻まれる。
それが、光を越えた速度の中で行われている戦いだとは知る由もなかった。
銃弾の速度さえも越える、迅位の第三段階。
その領域に入ってようやく、可奈美はダークカブトを捉えることができた。
「……! 行くよ!」
千鳥とクナイガンが高速の中で火花を散らす。その時に生じた斬撃が岩場を打ち付け、無数の土煙が舞い上がる。
「やっ!」
「うっ!」
クナイガンが、可奈美の体を斬り裂く。そのまま岩肌へ吹き飛ばされ、周囲の岩石が宙へ浮かび上がる。
「まだまだ!」
岩がまだ宙に浮いている中、可奈美とダークカブトは何度も何度も打ち合う。岩肌に刀傷が走り、斬られた波が落下を忘れる。
「ふふ。君……強いね」
突如として、そんな声がした。
誰の声か。その答えは、ダークカブトしかいなかった。
彼は千鳥を受け止めたまま、言葉を紡ぐ。
「どうしてそんなに強いの?」
ダークカブトは、殺気を放っていながらも、まるで子供のような声で可奈美に問う。
「僕は勝てなかった。でも、君は勝てそう。どうして?」
ダークカブトは、クナイガンと切り結んだまま、可奈美を崖へ押し当てる。
超高速の中、可奈美は崖と背中を挟まれ、身動きが取れなくなる。
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