加速世界の中で
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奈美へ向かうその光線を、
その盾になったダークカブトに命中した。
「……え?」
「そんな……どうして?」
ハルトと可奈美が唖然とする。
だが、ダークカブトは可奈美へほほ笑む。
「君に任せるよ。ひよりを……助けて……」
「……うん」
ゆっくりと頷いた可奈美を見て安心したのか、ダークカブトはそのままコエムシへ突撃する。
『お、おい! 来るな!』
コエムシの制止も聞かず、ダークカブトは妖精へタックルする。
その瞬間、彼の姿が人から緑の虫のような怪人になったのを、ハルトは見過ごさなかった。
そして起こる、緑の爆発。
同時に、銀色のオーロラが発生、一気に拡大したそれは、そのままハルトと可奈美を飲み込んだ。
「うわっ!」
「ダークカブトさん!」
可奈美の悲鳴を最後に、ハルトの視界は銀に呑まれていった。
「……あれ?」
見覚えのある場所。ハルトが気付いたときには、自室の景色が広がっていた。
「ここは……?」
「ダークカブトさん……」
可奈美は、衝撃が残っているのか、消沈している。
「可奈美ちゃん?」
「……うん。大丈夫」
『なーにが大丈夫だ?』
聞きたくもない声が一番大きな声だった。
『ったく、死ぬところだった……』
「コエムシ……!」
全身傷だらけのコエムシは、弱弱しく体を振りながら毒づく。
『ったく、いくらスペック高くても精神ガキンチョじゃダメだったか』
「コエムシ……ねえ! ダークカブトさんは?」
「ああ? んなもん、あの世に帰ったに決まってんだろうが。ったく、なんでオレ様がアイツのせいでこんな目に……」
コエムシは、それだけ言い捨て、その背後に銀色のオーロラを発生させる。
「待って!」
呼び止める可奈美。彼女は、消えようとするコエムシに、声を投げ続けていた。
「どうしてこんなことを……? 聖杯戦争と、関係すらない戦いじゃない!」
『関係ねえよ。オレ様は単に、殺し合いが見たかっただけだ。キュウべえ先輩はそういうのは放任主義だし、もう一人の先輩は『ウププ。コロシアイって楽しいね』ってだけで何もしねえしよお』
「キュウべえやお前みたいなのが……まだいるのか」
『ああ。……ったく、来るんじゃなかったぜ。あばよ』
コエムシは、そんな捨て台詞とともに、今度こそオーロラの向こうへ消えていった。
それを見送ったハルトは、可奈美に声をかけることも出来ず、彼女が「おやすみなさい」と改めて挨拶するまで黙っていることしかできなかった。
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