第9話 八雲の怪:後編
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笑いで持って泉美はそう自分を嘲るのであった。そうでもしていないと、自己嫌悪で自身の心が押しつぶされそうであったからだ。
だが、ここで姫子が口にした一言は、泉美が予想だにしなかった事であった。
「ううん、そんな事ないよ。その瞳、とっても綺麗だから、八雲さんは誇りに思っていいよ?」
「えっ?」
思いも掛けない一言に泉美は驚いた。そして、それは常に不安定だった彼女の心に取って、大きな支えとなったのである。
そして、そこで泉美は今まで溜め込んでいた気持ちが一気に溢れ、気付けば大粒の涙を流していたのだった。
「ありがとう……稲田さん。そんな言葉を私に掛けてくれるなんて……」
加えて、こんな良い子を手に掛けようとしていた自分を恥じ、大いに今後の反省材料にしようと彼女は心に誓った。
そんな泉美を見ながら、今度は自分が謝る番だと思い、姫子は言う。
「私こそごめんね。私は千影ちゃんと小学生の時からずっと学校が一緒でとても仲良しだったから、中々気付けなくて」
そう思い切って姫子は口にして、そして締め括る。
「千影ちゃんの事好きな人が他にいても当然なのに、その事を余り考えていなかったかもね」
それが姫子が出した結論であったのだ。そして、最後に彼女の本心からこう泉美に提案するのであった。
「だから、これからは『三人』で一緒にいようね、『泉美ちゃん』♪」
「あ……」
全く予想していなかった姫子のその案に、泉美は何度目か分からない驚きを感じてしまう。
だが、断る手は全く無かったのである。こうして大邪に荷担しかけた自分を、受け入れてくれるというのだから。
「ええ、こちらこそよろしくね。『姫子さん』」
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