第9話 八雲の怪:後編
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でも、これが人の心に付け入って潜在意識レベルから意のままに操るのが大邪のやり方なのよ……その大邪に荷担していた私が言えた立場じゃないのだけれど」
そう必至に弁明になってしまうような説明をする泉美であったが、どうやら当の姫子の態度は寛容であったのだ。
「でも、八雲さん。あなたは完全には大邪の力に取り込まれていなかった、そうだど私は思うんですよね」
「それって……?」
思い掛けない姫子の物言いに、頭の切れる筈の泉美ですら呆気に取られてしまい、聞き返してしまう。
「そもそも、八雲さんは大邪として私を取って喰おうとなんてしていない、そういう事です」
そう言って姫子は説明をする。本気で大邪衆として巫女を狙うのだったら、怪肢をけしかけるなり、神機楼で襲撃するなりという実力行使を仕掛けてきただろうという事である。
しかし、泉美はそのような事を決してしなかったとなると、ここで姫子が辿り着いた答えはこうであった。
「八雲さん。あなたはただ、いつも千影ちゃんとべったりしている私に、少し一泡吹かせたかった。ただそれだけの事だと思うんです」
「……」
その、自分でも気付いていなかった気持ちを姫子に指摘されて、泉美はただ無言になるしかなかった。
だが、ここで泉美はある事を確認しておかなければならないだろう。その事を言葉に出す。
「でも、何であの人が偽者だと分かったのかしら?」
「それはね、和希さんは優しくて厳しい人なんです。だから、あの時私に戦わなくていいって言った時に確信したのです。本物の和希さんなら『一緒に戦おう』って言うだろうって」
「さすがね、その人は……」
自分の両親もそういう人だったらと泉美は思うのだった。子に対して利益よりも自身の成長を促してくれるような人が。
だからこそ、その事で悩んでいる自分に背を押してくれる言葉を掛けてくれた千影の事を愛しく思って仕方なくなってしまったのだ。
そう泉美が思っている中、姫子はある違和感の正体に気付き、それを口にするのであった。
「ところで八雲さん、その瞳の色……」
それが違和感の正体であるのだった。確か彼女に以前会った時にはその瞳は茶色であったのだが、今それは妖艶なエメラルドグリーンとなっていたのだ。
その変貌の答えを、泉美は自ら明かす。
「それは、普段はカラーコンタクトをして周りに私の瞳の色を悟られないようにしていたのよ。それが、大邪衆に入った時には気付いたら無くなっていたという訳」
彼女がそうしていたのは、日本人とイギリス人のハーフである為に周りとは違うのを引き合いにされたくない為にしていた事なのであった。そして、彼女は自嘲気味に続ける。
「でも、嫉妬に塗れた人の事を『緑の瞳の怪物』って言うでしょ? そんな私にこれはおあつらえ向きだと思わない?」
そう乾いた
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