行き倒れが当たり前にいる町だとは思わなかった
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れねえけどな」
「ふうん。学者?」
「いや。まだ大学院生だ。ま、研究論文製作期間が長すぎるから休学中だけどな」
「へえ。なんの研究?」
「考古学ってやつだ。ま、昔の人が作ったものを研究するもんだな」
コウスケは、目をキラキラ輝かせながら言った。
「お前、疑問とかないか? 昔の人はどうやって文化を築いたのかとか。今残っている文明はもとより、今なくなっている文化とか、ワクワクしねえか? 例えば……」
「ああ! 語らなくてもいいから!」
語り出したら長くなりそうなコウスケを、ハルトは食い止める。
すでに午前中にも、こんな語りだしたら止まらない輩とひと悶着あったのだ。これ以上増やしたくはない。
だが、コウスケは「そうか」と片付ける。
ハルトはため息をついて、尋ねた。
「そんな人が行き倒れていたのか……大丈夫なのか?」
「皆まで言うなって。何とかなんだろ」
「そんな適当な……」
「コウスケさん!」
その時。そんな大声が、ハルトの耳に飛び込んできた。
「お? 来たか」
コウスケは、うんうんと頷いた。
彼が待っていたのは、女性だった。
年は、まどかや可奈美より年上。ココアと同じくらいだろうか。
青と白の縞々のシャツと、黄色のワンピース。金髪の前髪にはピンクの髪飾りが付いている少女が、こちらに手を振りながら駆けていた。
「ごめーん! コウスケさん、色々回っちゃって」
少女は、___口にホイップが付いている状態で___、手を合わせてコウスケに謝罪していた。
「おいおい。どこ行っていたんだよ響」
「あはは……ちょっと、迷っちゃって」
響と呼ばれた少女は、舌を出しながら「えへへ」と笑っている。
「お? 何やらお兄さんがお困りのご様子で」
と、響がハルトの表情を見てそう断定した。
「いきなりお困り認定されたよ。俺」
「ああ! 別に悪い意味ではないんです! なんか、コウスケさんに困らせられたような……」
「それは間違っていない」
「そう釣れないこと言うなよ、兄弟」
コウスケが馴れ馴れしく肩を組んでくる。初対面からまだ一時間もたっていないのに距離近いなと思いながら、ハルトは苦笑する。
「ねえ、コウスケさん。この人は?」
話の順序が分からない。
ハルトは名乗った。
「松菜ハルト」
「ハルトさん? 私は立花響です! えっと……コウスケさんの助手です!」
「オレ、多田コウスケ!」
「アンタはさっき聞いたよ!」
「よろしくね! ハルトさん!」
響が躊躇いなく握手を求めてきた。最近の若者はすごいコミュニケーション能力高いなと舌を巻きながら、ハルトは応じる。
「ねえコ
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