第三章
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「そうなる」
「それはまた」
「流石に食って骨だけにしても生き返るとはな」
末崎にしてもだった。
「驚いたわ、生き埋めも首を絞めたりもしたが」
「それでもですか」
「生き返る、しかしな」
「しかしとは」
「何度も殺しておると」
どうにもとだ、末崎は難しい顔で話した。
「あまりよい気分ではないのう」
「例え生き返ろうとも」
「やはり無闇な殺生はよくない」
相手が何をしても生き返ってもというのだ。
「話を聞いてまことにそうなのかと思いやってきたが」
「それでもですか」
「どうもな」
浮かない顔での言葉だった。
「そう思えてきた」
「そうですか、実はです」
「実は。どうしたのじゃ」
「風狸の殺し方が見付かりました」
それがわかったというのだ。
「一つだけあります」
「その一つはどういったものじゃ」
「はい、息を塞ぎます」
「それはもうしたが」
既にとだ、末崎は答えた。
「すぐにな」
「それが石菖を使えば」
「痛み止めのあの草をか」
「はい、それを使えば」
「あれをか」
「あれを風狸の鼻に詰めて」
そうしてというのだ。
「息を詰まらせれば」
「死ぬのか」
「左様であります」
「そうなのか」
「昨日読んだ書にありました」
「そうか」
「ではすぐに石菖を用意しますか」
「いや、もうよいであろう」
末崎は築海に達観した顔で答えた。
「これまで数えきれない位殺そうとしてきた」
「風狸を」
「そうしたが」
それでもというのだ。
「その間随分苦しめてきた」
「生き返ってもですか」
「死ぬ時は苦しそうであった、ではな」
「もう、ですか」
「死なせる様は止めようと思う」
「では」
「もう放す」
風狸をというのだ。
「そうする」
「そうですか」
「それでよかろう、その書の書かれていることでよしとする」
死ぬとわかったことでというのだ。
「石菖を鼻に詰めて死ぬということがわかればな」
「それでよしですか」
「そうしよう、そもそも石菖は痛み止めの薬じゃ」
その石菖のことも話した。
「生きものを殺す為には使うまい」
「薬であって毒ではないと」
「薬も使い様によっては毒になるが」
それでもというのだ。
「それは邪道、武士として邪道を使うことはな」
「よくないと」
「そうも思うしのう」
「石菖は使いませぬな」
「そうする、そしてな」
「もうですか」
「風狸は放そう、今まで済まぬことをした」
こう言ってだった、末崎は築海と共に風狸を元にいた山に連れて行ってだった。
そこで放した、すると風狸はすぐに木の上に登ってそこから空を滑って何処かへと飛んでいった。その姿が見えなくなり。
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