暁 〜小説投稿サイト〜
風狸
第二章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 末崎はそこに飛びついて風狸を捕えた、築海はその様子を見て驚いて言った、
「何と、あやかしを飛びついて捕えられるとは」
「拙者も日々武芸で鍛えておる」
 末崎は驚く築海に落ち着いた声で答えた。
「忍術もしておってじゃ」
「武芸として」
「それでじゃ」
 今の様にというのだ。
「あやかしといえど動きを読めればな」
「捕えられますか」
「そうじゃ、この紀伊は元々根来衆がおったであろう」
「雑賀孫一殿の」
「それで我等藩士の中にも忍術をする者がおってな」
「末崎様もですか」
「そういうことじゃ、忍術と水練、槍術は免許皆伝じゃ」
 そこまでの腕だというのだ。
「剣術はまだじゃがな」
「免許皆伝を三つもとは」
「それでじゃ」
「あやかしも捕えましたか」
「そうした、ではな」
「はい、これよりですな」
「やしきに連れ帰り」
 末崎の家にというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですか」
「確かめようぞ」
 まことに死なぬかどうかということをいうのだ、こうした話をしてだった。
 末崎は実際に風狸をまずは小柄で刺し殺した、これで風狸は死んだが風が吹くとすぐにその傷が塞がり。
 ひょっこりと起き上がった、築海と共にそれを見た彼は唸って言った。
「ふむ、まことにな」
「生き返りましたな」
「見ての通りな」
 まさにというのだ。
「そうなったな」
「そうして生き返るとは」
「苦しそうにしておったが」
 刺し殺されたその時はというのだ。
「赤い血を流してな」
「あっさりと生き返りましたな」
「随分とな」
「書にある通りでしたな」
「では今度は切ってみよう」
 言った通りにだ、末崎は風狸の首をその小柄で切ってみた、首は確かに胴と切り離されてまたしてもこと切れたが。
 風が吹くとまた生き返った、首と胴が引き合いそしてくっついてしまった。末崎はこのことについても言った。
「これまたな」
「生き返りましたな」
「まさか首と胴が離れてじゃ」
 そうなってというのだ。
「死なぬとはな」
「生き返るとは」
「流石にこれはない」
 末崎は唸って言った。
「わしも驚いた」
「拙僧もです」
「しかしまだじゃ」
「殺し方がありまするか」
「うむ、次は頭を割ってみよう」
 こう言って今度はそうしてみたが。
 やはり風が吹くと生き返り平然な顔をしている、それで末崎はさらにだった。
 煮たり焼いたりしてみた、妻に言わせて皮を剥いで丸ごと揚げて食ってもみた、そして骨だけにしても。
 風が吹くと生き返る、それで彼は築海にこう言った。
「まさに何をしてもじゃ」
「食って骨だけにされてもですか」
「風が吹けばな」
 それだけでというのだ。
「生き返る」
「そうなりますか」
「うむ」
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ