第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「まさに」
「そうなりますな」
「最初に見た猟師も思ったのでは」
「この女は妖怪だと」
「山は妖怪も多いです」
獣だけでなくというのだ。
「昔から言われて」
「誰もが知ってますな」
「海や川もそうですが」
こうした場所もというのだ。
「人がいつもおらぬ場所、街では物陰です」
「妖怪はそうしたところにいる」
「そこにいるものですから」
「山でそうした女を見れば」
「それこそです」
南方は老人に今度は肴の干した小魚を出しながらさらに話した。
「怪しいと思わぬ方がです」
「おかしいですな」
「そうなりますな、そしてその女から逃げて」
そしてというのだ。
「後で山にいた山の民からです」
「その女の話を聞いて」
「肉吸いとわかり」
その女の正体がというのだ。
「その猟師が世に伝えたのでしょう」
「そしてその話を聞いて」
「別の猟師が妖怪を退治しようと思い」
「弾にですな」
「そう書いて」
南無阿弥陀仏と、というのだ。
「撃とうとしたのでしょう」
「そういうことですか」
「はい、そして」
そのうえでとというのだ。
「この話が伝わったのでは」
「先生はそうお考えですか」
「お話を聞いて色々考えますと」
老人に飲みつつ考えている顔で答えた。
「やはり」
「成程、深いですな」
「昔話では偶然となりますが」
「よくありますな」
「しかしそれで助かることは確かにあっても」
それでもというのだ。
「そうそうあることではないので」
「偶然ですからな」
「この世の普通の動きを考えますと」
「そうした話の流れだと」
「考えた次第です」
「そうですか、実はです」
老人は南方に干し魚を齧りつつ話した。
「この肉吸いには他のお話もありまして」
「と、いいますと」
「別に南無阿弥陀仏と書かず」
「それを書いた弾を使わず」
「最初から持って行かないで」
そしてというのだ。
「鉄砲で狙いを定め火縄を打つと」
「それで、ですか」
「消えたというお話もです」
「あるのですか」
「これが」
「そうですか、そうした話も」
「有り得ますか」
老人は南方に問うた。
「こちらのお話も」
「むしろ最初から南無阿弥陀仏と書いた弾を持っているより」
「有り得る」
「そう思いました、まことに普通の姿と言葉遣いと歩き方の女が山奥に出てくれば」
「怪しく思い」
「妖怪に違いないと思い」
そしてというのだ。
「狙いを定めることもです」
「あるので」
「ですから」
それでというのだ。
「こちらの話の方がです」
「有り得るとですか」
「思います、しかし」
南方も干し魚を齧った、そうしつつ老人に話した。
「妖怪というものは怪しく怖くそして」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ