第二章
[8]前話 [2]次話
「こうしたお話を伝わりますが」
「それが何故かというと」
「こうした事例があるか」
若しくはというのだ。
「説明がつかないかと」
「その通りですね」
二人でこう話した、そしてだった。
南方はここで老人の杯に酒を入れつつさらに話した。
「そしてその話がですね」
「世間に伝わりますね」
「どこそこの猟師が襲われて」
そうしてというのだ。
「助かった」
「そのお話がですね」
「本人がちょっと言うと」
それがはじまりとなってというのだ。
「人の口から口に伝わり」
「そうしてですね」
「何時の間にかです」
「世間全体に広まって」
「定着します、こうしたことはです」
南方自身も飲みつつ言う。
「世にあることで」
「それで、ですね」
「妖怪についてはどうしても人々の記憶に残り」
「普通にいないものだからこそ」
「話も残るのでしょう」
「そういうことですね」
「そしてです」
南方はさらに言った。
「この肉吸いですが」
「どうも実際にです」
「果無山にですね」
「いて」
そしてとだ、老人も飲みつつ話した。
「ある猟師がです」
「たまたま見たか、ですね」
「運よく助かったか」
「そうなってですね」
「その猟師の口からです」
「広まって定着しましたね」
「そうかと、この紀伊に」
老人は高齢でずっとこの国名を使ってきたので廃藩置県によって紀伊が和歌山県になったことに馴染んでおらず旧国名を使ったのだ。
「それで伝わっています」
「そうしたものですね、しかし」
南方は飲みつつ考える顔になって述べた。
「どうして猟師が難を逃れたか」
「肉吸いに身体の肉を吸われて殺されずに済んだか」
「その逃れ方ですが」
「猟師といえば鉄砲を持っていますね」
老人はこのことを話した。
「そうですね」
「獣を狩るので」
「やはり鉄砲です」
これを持っているというのだ。
「昔は弓矢で今も鉄砲が使えないと」
「弓矢を使う猟師もいますね」
「はい、そして」
「鉄砲ですか」
「何でもです」
老人は南方にさらに話した。
「南無阿弥陀仏と刻んだ弾をです」
「鉄砲に込めて」
「そのうえで妖怪に向けて撃とうとすると」
肉吸い、この妖怪にというのだ。
「そうするとです」
「逃げたのですか」
「まるで煙の様に消えたとか」
「そうして逃げたのですね」
「そう言われています」
「おかしな話ですね」
南方はその話を聞いてやや首を傾げさせて述べた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ