ご注文は衣食住ですか?
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
かった。アンゴラウサギというトルコ発祥の種類のウサギだということを、ハルトも可奈美も知る由はなかった。
可奈美は取りつかれたように、両腕を伸ばしては下げ、ウサギに触ってみたい欲望と戦っていた。
「ねえ、それ!」
「非売品です」
「私何も言ってないよ?」
「非売品です」
「別に買わないから、モフモフさせて!」
「コーヒー一杯につき一回です」
一気飲みした。
「はい! お願い!」
「……」
少女は少し抵抗したそうな顔をしながらも、契約通り、ウサギを渡す。
「うわぁ! すごい! モフモフだ!」
ごしごしと全身をさすり、やがては頬ずりまで始めてしまう可奈美。明らかに一回という約束を反故にしている気もするが、ハルトが口出すことでもない。
「ねえ、このウサギなんて言うの?」
「ティッピーです」
「へえ……ティッピーっていうんだ。うん、モフモフ!」
名前判明以外は一切変わらないながら、可奈美はモフモフを続ける。
「ほほう。お客さん。見る目がありますな」
すると、ハルトの隣に、あのココアという店員が腰を下ろした。彼女は組んだ手に顎を乗せ、可奈美へゆっくりと語りだした。
「どうですかい? ウチの名物、ウサギのティッピーは? 凄まじいモフモフ天国でしょう?」
「ココアさん。変な喋り方してないで仕事してください」
青髪の少女が、ココアをたしなめる。するとココアは、少女へ抱きついて、
「だってぇ! モフモフを語り合えそうな人がいるんだもん! 少しだけ!」
「ココアさんいつもそんなこと言って大して仕事していないじゃないですか。ほら、まどかさんも困ってますし」
「でもー」
「ああ、あの! ごめんなさい! ありがとうございました! ウサギ、返します!」
回数を超えていることに気付いたのかどうか。可奈美は慌てて、ウサギを少女に差し出した。頭の上という定位置に戻ったことに安心したのか、少女も少ない表情筋で笑みを見せる。
「ねえ、ココアちゃん。チノちゃん」
ひと段落着いたところで、まどかが切り出す。
「ここ、部屋空いているって前言っていたよね? この人たち、居させてあげられないかな?」
「え?」
「この人たち、事情があって見滝原から離れられないんだけど、家がないんだって。ここに住まわせてあげられないかな?」
事実を述べている。確かに事実を述べてはいるが、客観的に聞くと、ハルトはすさまじい怪しさを感じた。
「いいよ」
「どうしてココアさんが許可をしているんですか」
ジト目の少女がココアを制し、まどかと向き合う。
「すみません。そういうことは、店主である父に聞かないと分からないです。……でも」
少女___まどかは
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ