暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
ギターケースの少女
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
まどかと少女。彼女たちはその問答をしばらく続けたのち、少女のほうが先に折れた。

「えっと……じゃあ、お言葉に甘えて……」
「これくだしゃい!」

 横入りしてきた、年少くらいの女の子。
 彼女が、その小さな手に握った五百円玉を店員へ掲げている。
 まだ若い店員は、苦笑いをしながらまどかと少女の顔を伺っている。鉄面皮で頷く二人を見て、女の子へアイスを渡した。無論、それが最後の一個だということは変わらない。

「……あ」
「あ……」

 まどかと少女が、同じような顔で立ち去る少女を見送る。
 二人とも、ポカンと顔を上げていた。
 それを横から見ていたハルトは、思わず腹がよじれそうになった。



 少女は、疲れたようにベンチに腰を落とす。

「ああ……残念」

 少女は、背中を逸らせながら、公園を見渡していた。
 見滝原の郊外と都心部をつなぐこの緑の公園は、大きな噴水がシンボルとなっていた。子供たちやその親が走り回り、ベンチにはカップルや家族連れが平日からくつろいでいる。
 そんな中、少女の前に、まどかが言った。

「あの……ごめんなさい」

 まどかが礼儀正しくペコリと謝罪した。だが少女は手を振りながら、

「ああ、いいよいいよ。限定って言っても、そんな永遠に次がないわけじゃないし。私、今ちょうどこの町にいようとしているから、問題ないよ」
「そ、そう? その……ごめんなさい」
「だから、謝らなくてもいいよ」

 少女はにっこりと笑った。
 だが、しばらく顎に手を当てて、

「うーん……でも、どうしてもっていうなら、ちょっとだけ頼みを聞いてくれない?」
「何ですか?」
「私、人を探しているんだけど。手がかりもなくてアテもなくて。……結局またおなか空いた……」

 少女はそのまま横になる。目を一文字にして、

「ねえ、お願い……何か、食べさせて……」

 チョコミント争奪戦どころではない空腹の様子の少女は、ベンチで横になった。
 まどかが戸惑っているところ、ハルトが話に割り込む。

「あ、それならいいこと教えてあげるよ。お金がなくても、食べ物なんて色々なところから手に入るよ?」
「え?」

 少女が強く食いついた。

「どこでですか? 食べ物って、タダで手に入るの?」

 少女は立ち上がる。顔をぐいっとハルトに近づけるせいで、彼女の吐息が顔に当たって少しむずがゆい。
 ハルトは顔を背け、

「手に入るよ。例えば」

 近くの茂みに近づく。
 即座に目当てのものを発見。ハルトはにやりと口元を歪める。

「こんなやつとか!」

 さっと手を伸ばして捕まえたそれは、

「トカゲええええええええええ?」

 まどかがそんな悲鳴を上げた
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ